関西座禅道場 細道会(俳句会)

 細道会(関西支部 俳句部です。宜しくお願いします)

 (世話人 柏谷絶学 連絡先:yoshiaki.kashiwaya@nifty.com)

 細道会は、故炭﨑博先生のご指導の下、平成13年(2001年)8月5日に第1回の吟行が関西支部の道場で行われました。以後、回を重ね現在93回まで来ておりましたが、炭﨑先生の体調の悪化とともに休止状態にありました。さらに、昨年2019年11月8日にご逝去され、先生の追悼句会を計画中に新型コロナウィルスの蔓延のために、休止状態にあります。
 
一方、平成28年(2016年)2月19日から、インターネット句会を始め、毎月19日は「俳句の日」と定めて、会員から俳句を募集し現在に至っております。

 
*毎月十九日締め切り
 *一人三句まで
 *上記絶学まで、メールで送信

の簡単な投句の場です。

皆様お気軽にご参加ください。初めての方も大歓迎です。

 

Index

▶第68回インターネット句会(2021年8月)

▶第67回インターネット句会(2021年5月)
▶第63回インターネット句会(2021年4月)
▶第62回インターネット句会(2021年3月

▶第61回インターネット句会(2021年2月)
▶第60回インターネット句会(2021年1月)
▶第59回インターネット句会(2020年12月)
▶第58回インターネット句会(2020年11月)
▶第57回インターネット句会(2020年10月)

 

▶第56回インターネット句会(2020年9月)

 

第106回インターネット句会(2024/11/19締切

 

11月は、炭﨑先生の命日であります。また私の学生時代の親友の命日。そして、義仲寺の知り合いも最近逝きました。ご冥福をお祈りいたします。

生きぬいて逝きし句友や冬立ちぬ   絶学

 

加藤碩信

初時雨掌(て)にやはらかき志野茶碗

賑ひてやがて寂しき酉の市

綿虫に漂ふ自由余生にも

 

土井重悟

土壁の干大根に風軽(かろ)し

遊郭の街は寂れて背戸の柿

秋天の波濤は白き済州(チェジュ)の島   

 

柏谷絶学

海風に押され完走天高し

昼飲みや吾の千鳥足秋うらら

焼き肉をたらふく食えば天高し

 

井内温雄

信楽鉄道衝突現場

犠牲者へ唱ふ一巻冬日中

冬立つや信楽駅の大狸

幸せの種は陽気や銀杏の実

 

森山凱風

新海苔を味わおうかと寿司暖簾

冬めきて老爺のオツムにニット帽

 

桃青忌偲びて励む句作人

 

第105回インターネット句会(2024年10月23日締切)

 柏谷絶学

朔日や霜月もまた大元宮

うそ寒や都恋しと手酌酒

大元宮氷雨に濡るる千木寂し 

 

坂本法燈

残暑とも云えぬ猛暑もやがて去り

(季重なりだけどまあいいか)

米消えて高値に泣けり秋深し

いも煮鍋うましなつかし故郷(くに)の味

 

坂本由美子

母ころび骨折するも柿喰らふ

野分去り空澄み渡り星近し

山粧ふ半袖かまた長袖か

 

 

美乃里

新涼を今日か明日かと待ちに待つ

てっぺんより盗人萩と下りて来し

毬栗やむき出しの針全方位

 

三原寿典

奥嵯峨に去来神旗や天高し

大元宮千木の突き刺す天高し

茅葺の屋根の繕ひ虫の声

 

土井重悟

琳派なる絵にぞよろしき芒かな

草臥れた自画像のごと案山子立つ

影深き古城に楚々と後の月    

 

橘 雅子

ペポ南瓜店頭飾るオレンジ色

転ばぬとバランスボール秋の空

小粒なり一個二個三個青みかん

 

橘 覚雄

祈りの塔薬師寺捧ぐ秋の空

初七日の松茸飯のこげ香る

月無言和わし月光通夜帰り

 

森山凱風

競走馬食欲増して馬肥ゆる

痩せたかな一声かけて秋刀魚焼く

遠出には何にもまして秋日和

 

井内温雄

随息に風の吹きしく観月坐

いびきかく居士寝てないと観月坐

弦月や対坐の我に恥ずかしげ

 

第104回インターネット句会(2024/9/30締め切り)

柏谷絶学

名月や平野神社に琴響く

天高し流れ悠々広瀬川

広瀬川流れの岸の芋煮会

 

三原寿典

琴の音や十五夜の月雲間より

実紫湖へとつづく坂の径

今もまだ仮設の暮らし秋寂びぬ

 

美乃里

秋の蝉ちりつちりつと鳴き終える

コスモスもこの暑さには顔そむけ

記念日を今年も忘れ秋の夕

 

加藤碩信

白粥に塩一つまみ今朝の秋

労られ敬老の日の疲れけり

耳弱が一心に追ふ虫の声

 

森山凱風

教室は笑いと涙夜学かな

漸くに秋七草の名を覚え

文人の才覚なぞる西鶴忌

 

橘 雅子

馬鈴薯へ羊蹄山の土つけて

朱色映ゆ反り橋渡る観月会

盤上の石音一打月見酒

 

橘 覚雄

名月や佛に語る婆婆のこと

初取りの紫色の長が茄子

祈りの塔薬師寺つつむ月の宴

 

 

坂本法燈

ひんやりと季節は巡り河辺路

玉ねぎや初心の典座を涙さす

この世をば望月と観て三昧行

 

坂本由美子

暑さ抜けたちまち町に長袖が

鼻先をからかうように赤とんぼ

葉鶏頭天に向かひてつんと伸び

 

井内温雄

【別府鉄輪(かんなわ)温泉にて】

湯けむりとラジオ体操鰯雲

秋雨や湯けむり散歩句碑あまた

満月や別府鉄輪(かんなわ)湯のけむり

 

土井重悟

月の夜に雅なる音の御鳳輦

人は皆土に眠ると秋の風

 

山深みおどろに葛の乱れをり

 

第103回インターネット句会(2024/8/19締め切り)

 野村正勝

北口の槍はるかに金の夏

一隅に弾ける色や百日草

無花果の伊と和の味を比するかな

 

柏谷絶学

生か死か蝉の骸は無言なり

舟宿に舟浮べけり太郎冠者

侘しさや蜩の鳴く坂下る

 

 

坂本法燈

今年またテラスに同じ虫が鳴く (13階マンションテラスに何故か)

死んだふり蝉爆弾に童泣く

ハルカスを借景にして万灯会

 

坂本由美子

満月の明かり差し込み部屋に満つ

ゴキブリとまじ対峙せり逃がさぬぞ

日陰縫いもくもく歩く勤め人

 

美乃里

西瓜切る五臓に良しとバスで聞き

キンとしてシヤリシヤリシヤリとかき氷

炎昼や知らぬ人住む父母の家

 

橘 雅子

瀧の軸納める箱は秋を待つ

縁側で数珠玉干して縁つなぐ

西瓜切る丸々が良い駄々こねる

 

 橘 覚雄

熱帯夜右へ左へ身をもだえ

琴一打読経はじまる盆の月

 

仕手出ずる静かに暮るる薪能

 

三原寿典

翁追ひ山寺で聞く蝉の声

蒼穹を持ち上げたわわ青き柿

氷旗揺るる茶寮に吸い込まれ

 

加藤碩信

病む妻の小さき背なの汗拭ふ

チップしたしクルー涼しき救急車

直立のままの衰へカンナの朱

 

土井重悟

流灯や色の漂ふ嵯峨の池

盤上に妙案ぱちり秋扇

道の駅えりすぐりなる甜瓜 

 

 

 

森山凱風

女学生駅頭に咲く夏帽子

家並に囲まれ育つ青田かな

寂しげに朽ちた紫陽花頭垂れ

 

井内温雄

瀧行の誓願終へて破顔かな

陰徳を積む人の汗さりげなし

托鉢や一休茶屋の切西瓜 

 

第102回インターネット句会(2024年7月19日締め切り)

良い句なので無断で掲載させていただきました。

四国支部第184回摂心会が葆光庵春潭老師の御指導の下、711日(木)~15日(月)四国道場で行われた時の俳句です。

瀧の軸音なきを聴く朝茶席 (春潭)

 (主客が、床の間の軸に拝礼し、見入り、そして耳をそばだてる姿が目に浮かびました。) 

  

坂本法燈

死ぬことは生きると見たり夏籠り

赤とんぼ夏安居庭に群れ遊ぶ

老いたるも熱き血燃ゆる天神祭

 

坂本由美子

満月が窓に映りて二つなり

お囃子で祭り近しとはた気づく

おさなごの美しき瞳に望の月

 

美乃里

青芝に三人の影肩揺れる

足下のくちなわすでに頭上

木耳やそなに太りて何を聞く

 

 

加藤碩信

あめんぼう通りすがりの雲に乗る

堂守の狛犬像も日焼けして

作り滝岩を愛撫して止まず

(ますますの佳句ありがとうございます。)

 

森山凱風

仔虫とて暑さ苦手と蔭に居り

青空に我が物顔の雲の峰

 

今年こそカナヅチ返上海開き

 

橘 雅子

蝉の声目覚め清しきパンケーキ

単線の待合室へ糸蜻蛉

奈良晒布肌じばん白肌やかし

 

橘 覚雄

立像の塵を拂いて盆支度

夏の宵勝利を願ふ那智の石

生ビール乾杯の声高らかに

 

三原寿典

厨子開き文殊に見せむ蓮の花

満開の蓮や石仏微笑みて

生ビール美しき彼女に泡の髭

(旨い!)

 

土井重悟

檜扇のひときは映ゆる苔の庭

竹林に揺蕩ふ夏の光かな

溽暑にも風雅求めて朋来たる

  

 

井内温雄

[奈良地区大会から]

白南風に乗り返球や本塁死

反り返り校旗掲ぐや炎天下

校歌聞き部員十人夏終わる

 

柏谷絶学

座具一つ目に入らぬか虎が雨

置去りにされたスマホや梅雨曇

懐かしや京の盛りの蝉時雨

 

 第101回インターネット句会(2024/6/19締め切り)

美乃里

病み上がり万緑痛い日曜日

梅雨晴間大の字になる板廊下

青芝に三人座せば女学生

 

 

坂本法燈

甘酒に力もらいぬ照り地獄

簾上げ香炉峰見ゆ古も

禅寺の主となりたるがまがえる

 

坂本由美子

じめじめと終日降りて流石梅雨

素麵の出番となりし昼食に

蚊柱に巻き込まれふと苦笑い

 

 

柏谷絶学

夏草や青葉区民となりにけり

細道をたどり辿りて青葉の地

夏風や歌枕の地に誘われて

 

三原寿典

父の日や形見の季寄せは虚子の編

涼風や雪舟の竹林七賢図

白鷺や四条大橋くぐり抜け

オマケ

真如堂の朱き山門若葉風

 

土井重悟

蜜を吸ふ蜂になりたや蕊の園

羽ばたいて且誇るごと鳬の声

助六の傘も借りたや虎の雨

 

 

 

加藤碩信

草笛の上手な兄は往きしまま

余花と言ひ余命と言ふも長からず

逃(のが)したるバスを見送る薄暑かな

 

森山凱風

短夜や思いに耽る時は過ぐ

苗打ちを担う夫と妻の息

どぶ浚いミミズの住処無くなりぬ

 

井内温雄

[三田麒麟ビール工場見学]

発酵はミクロの不思議ビールかな

巻締や缶ビール分(ふん)二千本

味比ぶ三種のビールほろ酔ひて

 

 

第100回インターネット句会(2024年5月19日締切)

坂本法燈

道求め夏安居集う古寺や

顔合わせ双子ほほ笑む夏の日に

みちのくに勤める友にも夏来たり

 

坂本由美子

半袖かいや長袖か迷う朝

目の前に広がる新緑吸い込まれ

 

ボート漕ぐ波間に光る若人よ

 

柏谷絶学

ハナミズキ一輪咲きておらが町

急坂を走れば我も夏に入る

政宗が築きし街や夏の川

 

土井重悟

沢蟹の這ふ磐の上の新樹かな

新緑に艶めく形の練供養

蕊の園虫戯れる牡丹かな

 

 

橘 雅子

幸せと言いつつ晩に水中り

百の句へ思いはせつつをけらたく

青葉風句会百回雲悠々

(いいですね! 私の居る青葉山にかけてくださり、雲悠悠)

 

橘 覚雄

夏の月島唄聞こゆ美ら都

本願寺甍まぶしき新樹光

米寿なる武者人形の刀さび

 

三原典子

新樹光渓流の音谺する

青葉山天から枝垂る藤の花

鉄釉の擂鉢発掘夕焼け空

 

美乃里

金と銀飽くほどの蘭神津嶽

新緑に溶け込んでみる箕面山

花楓ポツと頬染め人停める

 

 森山凱風

葉桜や参詣人は団子食う

孫かしら藁ぶき屋根に鯉幟

武者人形畳一枚占領す

 

加藤碩信

若楓洗ひ立てなる今朝の空

(さすがです!素晴らしい表現です。)

薔薇園に世界の美女の並びけり

人知れず土に溶けゆく桜の実

 

井内温雄

(橿原市今井町散策)

色々な虫籠(むしこ)窓あり夏きざす

床の間に是什麼(これなんぞ)とや楠若葉

 

夏立つや格の違ひの太格子

 

第99回インターネット句会(2024/4/19締め切り)

阪本法燈

花吹雪双子の頬に一つづつ

うばぐるま包むがごとく花吹雪

乳母車わだちを飾る花筏

 

坂本由美子

露店減り花見もどこか寂し気で

ぼたん咲きそのおおきさに息をとめ

まごのかぜおんぶにだっこでばあもらう

 

三原寿典
退院の朝にまぶしや夏の色
山法師蒼穹に映ゆ交差点
朧月満席となる立ち呑み屋

 

畝傍山裾にはべらす花の苑

橘 雅子

写経終ゆ木の芽雨降る輪立ち跡

花の山金峯山寺見下して

若葉雨二輪で追はへ淀の川

 

橘 覚雄

老いるともなほ恋しきや春の月

異国語で桜見物大阪城

小船ゆく琵琶湖疎水は青葉雨

 

 

美乃里

夢見草妣(はは)に会いたし1周忌

(よな)ぐもりウツウツウツと日もすがら

たんぽぽのぽぽにつかまりどこ行こか

(確実に進歩してますなー!)

 

 

森山凱風

遠景と近景を割く初桜

卒業期蔭にひっそり涙する 

罪無くも騙すは罪と四月馬鹿

 

加藤碩信

花びらの流れて三好達治の忌

をみならの人魚坐りや花筵

土光翁偲び朝餉の目刺かな

 

土井重悟

行きずりの恋とや言はん沈丁花

初舞台都をどりの跳ねた宵

 

夕されば鐘の音に散る桜かな

 

柏谷絶学

広瀬川流れゆうゆう花筏

初燕会えてうれしき新天地

五分粥に小さき喜び風光る

 

井内春男

うららかや列蛇行して蛇行剣 

花の下「火垂の墓」の生誕碑 

 

六腑いま花見の酒の沁みわたる

 

第98回インターネット句会(2024年3月31日締切)

美乃里

息合わせ拳を合わせ春の演

春うららブツブツブツと言葉編む

山に入るむせるにほひの馬酔木かな

 

坂本法燈

いのち懸け遍路辿るや糸の道

馬酔木花異国より来し臘細工

小米花やなぎのごとく雪のごと

 

坂本由美子

タンポポも這いつくばって生きている

見上げては心急きつつ開花待つ

露店出て後は桜を待つばかり

 

 

森山凱風

春めきし緑濃き池鯉十匹

永らえて鯉棲む池に春来たり

埃積む顔は晴れ晴れ雛飾る

 

 

加藤碩信

強東風や方位決まらぬ風見鶏

剪定の欅並木や空広し

胸高の袴ひらりと卒業す

 

 

野村正勝

青森の字の司令塔吹雪く空

弘前や蕎麦一杯に温もりて

機の窓の雪降る先に陽の龍

 

三原典子

咲き誇る花や一条戻り橋

都井岬果てまで駆ける春の駒

良き夢の続きを見むと朝寝かな

 

絶学

梅東風や最後の給与受取りぬ

風光る新たな土地に夢新

春の月齢数える今日明日

 

土井重悟

竜天に昇る異才や初土俵

夭折の吾子を引き連れ鳥雲に

逸楽の一日を終え亀の鳴く

 

井内温雄

寄席跳ねて演者の礼に春入日

白き歯を見せて球児等春温し

句友より巡礼便り春暑し

 

 

 

 

 

第97回インターネット句会(2024年2月19日締切

智常

春立つや昭和風情の通勤路

深き黒そしてパリッと海苔を食う

水仙の毒に許さぬところあり

 

森田さとみ

午前二時窓叩くなり春一番

雨水かな路地薄紅の天満宮

丘下る纏う香伴う梅の精

 

 

美乃里

口の端に海苔つけ給ふ夫寝落ち

夢にさへふる里のなく春姉妹

一輪のすみれ多勢で覗き込む

 

加藤碩信

かたや地震こなた裏金冴返る

初場所の声援優し能登力士

税申告スマホ扱ふ爺の指

  

 橘 雅子

梵鐘の響く邑里余寒あり

手焙りにそっと添わせる八十路の手

円空の眼力の彫り暖たかし

 

 橘 覚雄

薄日さす墨染まとい春近し

春眠の心地豊かに夢の中

春の磯園児楽しく砂遊び

 

野村正勝

初みくじ大小の吉孫妻に

輪島塗り技の再起を祈る春

辰年や大事故続き歳の開く

 

柏谷絶学

吉田山節分祭(まつり)の後の静けさや

げにやげに京の淡雪すぐ消えて

春立つや拍手二つ響きよし

 

三原寿典

芳しや古木にひらく白き梅

春めくや弁財天の衣(きぬ)揺れる

いぬふぐりあらひらいたと午後2時半

 

土井重悟

佐保姫の待つ大和路へ足軽し

         ※ 軽(かろ)し

土裂くる能登の棚田は冴え返る

獺祭岩陰に見る狐かな

 

森山凱風

寒明けて会う人毎の懐かしさ

縁先の虫蠢いて水温む

寒明くも未だ成らざる抱負かな

 

井内温雄

音楽の本質見抜くオザワ逝く

噛みしむや老師の叱咤あたたかし

雲水の名残絶ち切る鬼やらひ

 

           

 

第96回インターネット句会(2024/1/19締め切り)

三原寿典

寒猿や四条横切り寺町へ

懐かしき丸い筆跡年賀状

 昇進のお礼詣りや京の雪

 

柏谷絶学

出張や寒気団連れ九州へ

道産子も九州の地で着ぶくれて

もつ鍋の旨さ引き立つ朝餉かな

 

 

橘 雅子

華となり華甲を祝す紅椿

竹飾り流されて行く能登の邑

紅白の宝恵籠ホイと法善寺   

 

橘 覚雄

元旦や夫婦で読経弥陀の前

七草の名数えつつ朝の膳

粕汁の甘き香に散り蓮華

 

坂本法燈

雪国の家倒壊死荼毘付せず(友の知人の親族の話)

幼な子や初餅つきに何思う

蠟梅を摘みて皆にと配る友

 

坂本由美子

ごみ捨て場年の瀬迎えはち切れて

田作りを夜なべに調理母想う

白ネギのグラタンなんてどんなだろ

 

森田さとみ

初雪やちょうど良き量(かさ)愛でる朝

凍窓や年子の手形並びおり

ヒロインや色無き街の赤コート

 

加藤碩信

初笑ひするをためらふ能登地震

校庭に火の粉弾けるどんど焼き

女正月しみじみ歌ふ舟唄を

 

森山凱風

射ることのなき世を願う破魔矢かな

年玉の当り外れの半ば過ぎ

着ぶくれの客押しあって勤め出る

             

井内温雄

大吉や昇進すると初みくじ

剃髪に寒風拐ふ帽子かな

連覇へと広田神社や初詣

 

美乃里

ワイシャツに闘いの皺猛吹雪

産声と乳の匂ひと風花と

実南天あるじなき庭艷やかに

 

土井重悟

冬の朝呼吸(いき)してるねと妻の顏

降る雪に欲も愚痴もみな失せにけり

 

木漏れ路の枯葉踏みつつ男山   

 

第95回インターネット句会(2023/12/19締め切り)

12/19

智常

ぬくぬくと茶の間で戦争を見る違和感

(私は破調の句は好きではないのですが、この句の場合は内容が内容であるので、かえって破調が合っているというかそれでいいなと思いました。おっしゃる通りで、私もその違和感に罪悪感すら覚えることがあります。)

容赦なく時が流れて師走かな

(素晴らしい、いい句ですね!)

手袋の中に切符を入れし頃

(これぞ智常の俳句の真骨頂!私にはわかりません(笑))

 

坂本法燈

臘八会徹宵明けのさやけさや

小春日や眠る双子はすやすやと

冬晴れにブランコの子ら吸い込まれ

 

坂本由美子

ベランダで干し柿並びゆーらゆら

だめだけど鳩に餌やり母なごむ

柿の実を見上げて思う熊のこと

 

 

野村正勝

朝日受く摩天楼背に鶫とぶ

総裁の隣でお薄受く小春

冴冴と師範のお辞儀座を圧す

 

三原寿典

蔵王山夕陽に揺るる冬薄

遠刈田窓一面の冬景色

冬うらら弘徽殿跡はシェアハウス

 

 

柏谷絶学

定年を控えて迎ふ歳の暮

水仙の律儀に揃ふ庭の端

終活と就活の年冬鴎

 

美乃里

慌ただし干柿並ぶ時期(とき)が来た

怒(いか)る火をストーブに込め停戦せよ

焼肉を鱈腹食べて薬喰い

 

森田さとみ

恩師宅印軒端の実南天

十字釜しゅんしゅんと降誕祭

(十字釜: 桃山時代の写しで正十字の形のお釜です。)

月映えて瓦礫に埋む聖家族

 

橘 覚雄

ひれ酒を飲んで暖簾をくぐりぬく

顔見せや看板横目で京の街

腰痛み寝返りつらき羽布団

 

橘 雅子

水仙の葉の折れ愛し香和わし

禅の会祝ふ茶席に紅椿

手培りを置かれる席に無事の軸

 

12/18

森山凱風

水鳥の羽音ひそかに池の夕

冬の朝湯加減宜し旅の宿

短日の湯煙のなか人の影

 

加藤碩信

冬晴や70周年祝ひたり

古稀となる支部を祝ひておでんかな

禅林や捨てよ捨てよと枯葉降る

(いいですね!さすが心に沁みる一句!)

 

土井重悟

墨に在る五彩を知るや漱石忌

懸命に蜜を吸ふなり冬の蝶

河豚の面世に憤懣を漲らす

 

12/17

井内温雄

極月の銭湯痛き熱さかな

空風や托鉢の礼深々と

歳晩や広田神社に願一つ

 

 

第94回インターネット句会(2023/11/19締め切り)

11/19

美乃里

冬支度母に倣つた几帳面

外つ国の人も酔ひしれ紅葉狩

四隅見て枯野に一歩踏み入れる

 

三原寿典

友に似た五百羅漢や月煌と

経の声紅葉五色に染めにけり

石蕗の凛とした色時雨の忌

 

 

柏谷絶学

キラキラと光る阿蘇海冬近し

橋立や友にもらいし氷下魚あり

天歩く如き橋立冬の路

 

坂本法燈

忙しやダブルで迎える冬安居

柚子たわわ宴を飾らむ大馳走

冬バラの気高き白さ目に眩し

 

坂本由美子

落葉し枝の向こうに透ける空

久しぶり歳暮もらいて話し込む

年賀状様子知りたく声聞きたくて

 

橘 雅子

病室より寒オリオンへ独り言

寒気せし葛根湯求む退社時

一つ紋霜に湿りし露地草履

 

11/18

加藤碩信

病む妻と無言の会話夜の長し

小春日やお犬様乗る乳母車

よく喋る運転手なりバス小春

 

土井重悟

墨にある五彩を知るや漱石忌

河豚の面世に憤懣を抱きをり

国境の凍土に不戦の誓ひ在れ  

 

森山凱風

冬枯れや迷い猫じっと睨み据え

初冬や晩学努む我が身かな

歳重ね寂しくもあり冬に入る

 

 

         

11/17

井内温雄

第三百三十回 時雨忌

雨垂れの石を穿つや時雨の忌

小春日や翁はなごむ風羅の舞

庵主問ふこの道如何翁の忌

 

第93回インターネット句会(2023年10月19日締切)

 10月19日

智常

残る虫戦火は遠いようですぐ

とぼとぼと防具かついでゐのこづち

通勤路背筋を伸ばす曼珠沙華

 

美乃里

武庫川の廃線トンネル天高し

秋晴れであれやこれやと多忙です

放屁虫大発生とニュース云う

 

 

柏谷絶学

秋風や逝きし娘の影揺らす

なぜ逝った夫の叫びや秋寒し

幼き児残し逝く母冬隣

 

土井重悟

黒塚や芒の庵に宿借らむ

吊し柿湯吞手にする庵主さま

植林に向ふ親子に木の実降る

 

加藤碩信

妻病めば新酒酌みつつ厨事

家はジム家事はスポーツ秋うらら

心付けしたき爽やか救急車

 

橘 雅子

陽を仰ぎ雲間に遊ぶ新松子

戯れし女郎花折り姉走る

尻張りの瓢の縊れ数寄者居り

 

三原寿典

一列に奥宮を抜け紅葉狩り

蝶夢説く老いた学者や天高し

ノシャップにしずむ夕日や秋の波

 

坂本法燈

嬬好きな季節外れの蒲萄買う

禅看板亡き友の家秋に映ゆ

秋の海男浪女浪の太鼓打ち

 

坂本由美子

でっぷりと豊水梨の見事さよ

風呂上り一人月見のぜいたくさ

ベランダで一人チチチと秋の虫

 

10月18日

森山凱風

黄金色案山子の仕事なくなりぬ

青い空紺碧の海秋高し

赤い羽根皆善人に見えるなり

 

井内温雄

乾杯は出発合図秋の旅

【花山温泉】

行く秋や湯の華割りて一人浮く

【和歌山城】

秋霖や忍者と客の立ち回り

        

 

 

第92回インターネット句会(2023年9月19日締め切り)

 

坂本法燈

(去年に続き今年また)

不思議かな十四階で虫の声

秋暁の社に祈る乙女かな

ちちろ鳴く植木の鉢を我が家とし

 

坂本由美子

ベランダに来たりし虫の声せわし

車いす乗る母の背に汗こもる

コンビニの冷房効てひとごこち

 

三原寿典

露草や北前船の蝦夷地へと

にじり口秋明菊の小さき籠

 旅先で路面電車に草紅葉

 

柏谷絶学

天高し立山連峰迫り来る

白エビは味よし香よし姿よし

秋深しプランタ仕舞ふ乙女かな

 

森山凱風

芥川灯火親しく読み耽る

秋の蚊の頼りなく飛ぶ一匹哉

敬老の日を迎ふ吾手を眺む

         

美乃里

窓あけて今日も残暑に喧嘩うる

(すばらしい!おそれいりました!)

秋刀魚の値チラと覗きて店を出る

ひと手間をかけて器へ抜菜かな

 

土井重悟

黒塚や芒の庵に宿借らむ

境内に稚児のざわめく秋まつり

毛見終えて厨沙汰する村の長   

 

加藤碩信

秋の蚊に老人の血を分け与ふ

秋暑し妻に付き添ふ救急車

耳弱の一心に追ふ虫の声

 

井内温雄

有馬温泉

秋天を拝す行基や有馬の湯

泉源の有馬ゆかしや白露雨

金の湯に浸かる極楽秋の雨

 

 

第91回インターネット句会(2023年8月19日締め切り)

8月19日

 

坂本法燈

真夏日やじじばば共に誕生会

気仙沼戻りガツオのふくよかさ

原爆忌生れし妻とめぐり合い

 

坂本由美子

スコールに負けじと漕ぎに漕ぐペダル

聞こえるよ早や虫の音が早過ぎる

蝉の声台風去りて吹き飛んだ

 

柏谷絶学

病み上り待ちに待ったりビヤガーデン

巡礼の最後の寺や虎耳草

手を合わせ見送る女の茄子の牛

 

三原寿典

蒲の穂の揺るる川辺や夕まぐれ   (晩夏)

蛇の衣(きぬ)奥宮参るきざはしに (仲夏)

 

秋水の湧きたる音や道険し     (三秋)

 

智常

ドーンドン音を眺めて遠花火

トルコより干し無花果の香り聞く

定年と還暦と来て残暑去る

 

 

美乃里

香水を一滴これからどこ行くの

爪ぐれに爪そめ集う少女かな

食卓に香りの強い新豆腐

 

 

橘 雅子

更衣透けし墨染若住職

仕手の出や拍手に始じむ薪能

ロックミシン糸のつれありアツパツパ    

 

橘 覚雄

読経せし大谷本廟墓参り

法師蝉鳴く声まねる幼き日

朝顔の大輪咲くや自坊庭

 

 

土井重悟

消防のホース締めこむ村相撲

松影に色なき風の渉りをり

寝覚むればひたむきに鳴く虫の声   

 

8月17日

加藤碩信

生きるてふ厳しき八十路汗滂沱

病む妻に林檎を与ふ草田男忌

コーヒーの豆挽く香り今朝の秋

 

森山凱風

遠き日々走馬灯より浮かび来る

顔(かんばせ)に光を写す大文字

我が生は線香花火に似て非なる

 

井内温雄

西宮海清寺留守番

次々と参拝に礼盆の寺

台風来参拝ひとり布施ひとり

 

夕立や樋の溢るる寺の庭

 

 

第90回インターネット句会(2023/7/30締め切り)

智常

怠けてはいけないとあり大暑かな

炎天になぜ出てくるか大蚯蚓

 

電動の自転車かろき雲の峰

 

坂本法燈

張り裂けて静寂破る夏花火

庭先にとんぼ舞い飛ぶ安居明け

蝉時雨祭りばやしと競い合い

(ジージーよシャーシャー鳴くはクマゼミよ、ちなみにエゾゼミジージーと)

 

坂本由美子

シャーシャーと蝉の鳴き声浸みわたる

夕に咲くおしろい花のなまめかし

 

草刈られ後は花火を待つばかり

 

橘 雅子

黄西瓜をかぶる夫の歯形かな

雌鹿鳴く寂しく遠く春日山

寺内の海鼠壁よこ彼岸花

 

橘 覚雄

夏花供え瓶の水かへ日課なり

磯ノ浦迫りて高き卯波かな

ランニング5周中ほど夏の星

 

 

三原寿典

尾の青き蜥蜴の案内(あない)小さき堂

豆バスを待つ夏草の茂る径

草庵をすっぽり包む蝉時雨

 

柏谷絶学

点滴の針刺したまま夏の夜

剃毛のあとチクチクと溽暑かな

迅雷や我はベッドに縛られて

 

 

美乃里

大人とて触れて行きたし日向水

熱風に空蝉転ろぶ硬い庭

挨拶と会話短し日の盛り

 

加藤碩信

いくさなき国の若衆荒神輿

蚊帳吊草遊びやせんと茎伸ばす

火の如く燃えゐてしづか夏の薔薇

 

井内温雄

白南風に女子の始球やど真ん中

雷鳴や審判野手を待避させ

サヨナラや怒涛の歓喜雲の峰

 

 

森山凱風

冷たさがひとしおの早い海開き

梅雨明けの木々尚更に緑濃く

カブトムシ露店の台を這い出しぬ

 

土井重悟

傾ぐ機の翼彼方の大西日

夕暮て村の灯見つめるかわたろう

 

かなぶんの飛翔の先の大うだつ 

 

第89回インターネット句会(2023年6月19日締め切り)

 

6月19日

智常

紫陽花や江ノ島見ゆる丘に立つ

緊急の停車で一句ひねる初夏

災難も淡々と過ぐ夏安吾

 

 

美乃里

糸雨の先にあじさい沈み居り

そら豆の菓子の向こうにいる二人

夕立晴れ重い空気のまとわりて

 

 橘 雅子

浜木綿の磯の砂浜散歩道

ベル押して恥かし娘藍浴衣

うすものを羽織ってみれば母の影

 

 橘 覚雄

短夜や海辺の光り打ち返へし

五月雨や身も心とも濡れ出ずる

息つめて静かに蕾む杜若

 

 

坂本法燈

久方の天神囃子にギャルみこし

和尚より貰いし水蓮庭照らす

鳥中り下車させられし夏夜汽車

 

坂本由美子

ベランダで睡蓮咲きてまるでモネ

夏至来たり日長くなりてとくしてる

出番だぞ虫除けスプレーもう刺され

 

三原寿典

七条の材木町や梅雨晴れ間

寺清水水かげろふの遊ぶ岩

 

虫干や亡母(はは)の残り香風に舞ひ

 

柏谷絶学

夕化粧機嫌悪そな朝の路地

お帰りと言ふてくれるや夕化粧

楊貴妃の膝元に待つ夏の萩

 

森山凱風

植田吹く風は水面を撫でていく

紫陽花は白から変わる七変化

てるぼうずため息ばかり梅雨の空

 

土井重悟

筒鳥や山の静寂に和みをり

繁る葦舳先に分くる櫂の音

掘割に彩り落とす四葩かな   

 

 

加藤碩信

浄土とは今居るところ昼寝覚

甚平着て妻の介護や菩薩行

補聴器の耳に蚊の声近寄り来

 

井内温雄

好日や翁の寺の風光る

薫風やいまここを詠む心地よし

アクリル板取らるる句座や風薫る

 

 

第88回インターネット句会(2023/5/19締め切り)

 

5月19日

智常

面を取り黙想すれば夏に入る

主張なく揺れて未央柳かな

厨房を新調し妻若葉風

 

 

 

 柏谷絶学

水力の鋼管に添ふ夏薊

古扇連中の老いひしひしと

我が老いを騙さんが如朝駆る

 

坂本法燈

原爆の暑き日サミットに甦る

甘酒で母乳出るとてまた作る

鯵刺しが海の香呼びて故郷(クニ)思ふ

 

坂本由美子

曇り空眺めて憂う梅雨近し

新緑のみずみずしさを吸い込んで

暑くなりペットボトルの茶うまくなり

 

 

三原寿典

鶯の声に包まれ握り飯🍙🍙

姫胡蝶花や堂へと千のきざはしを

寛次郎の焼きし大皿柏餅

 

美乃里

この事は姉妹の秘密青山椒

送られしカーネーションを祭壇へ

滴りの間と間に吸わるる時間かな

 

土井重悟

筍の衣剥がせば真白なる

竹藪の闇に誘ふ黒揚羽

葉桜や命育む時節なり   

 

森山凱風

制服の白さ目眩む衣更え

葉桜を見に参るひと通という

初夏や萌ゆる緑に若返り

 

 

加藤碩信

散水のホースのたうち夏来たる

バードウィーク烏の声もいとほしく

五月佳し晴れはなほ佳し風も佳し

 

井内温雄

白鷹の気高き御神酒奉扇会

奉扇や開経の偈の淡々と

庵主説くけふ尊しと奉扇会

 

 

第87回

智常

新緑が車窓に触れる伊勢路かな

ショッピング街は燕も人も舞ふ

 

四人目の骨を拾えば春の雨

 

 

 

第87回インターネット句会(2023年4月23日締め切り)

 4月23日

智常

新緑が車窓に触れる伊勢路かな

ショッピング街は燕も人も舞ふ

四人目の骨を拾えば春の雨

 

加藤碩信

春らんまん選挙ポスター皆笑顔

参内の大使の馬車や風薫る

甃の上花びら流れ達治の忌

 

 

三原寿典

清楚かな白山吹の神殿に

ゴトゴトと阪急電車葱ばうず

追風に神輿渡るや桂川

 

 

柏谷絶学

久々の松尾祭(まつおのおまつり)御出かな

山吹や八重に一重に咲きみだれ

楚々として白山吹は一重なり

 

坂本法燈

さくら咲くキーウの街よよみがえれ

孫生まれしかも双子の春の幸

双子座の共鳴見守る座禅草

 

橘 雅子

親鸞の経の墨蹟花万朶

青楓葉陰まぶしく建仁寺

龍虎の図四つ頭茶礼牡丹庭

 

橘 覚雄

香を摘まむほどよき風の花御堂

散り桜黒衣の背へ二三片

合掌す釈迦の頭へ甘茶かけ

 

4月21日

森山凱風

へばりつく葉をば丸ごと桜餅

木蓮の枝の先にも一つ咲き

この言葉知らぬと言えば四月馬鹿

 

4月17日

土井重悟

清明やトラクター繰る実習生

散る花に亡き人偲ぶ齢かな

梅若忌櫂の雫に都鳥 

 

井内温雄

写経終へ澄みしこころや灌仏会

浮世絵の彫師の極み花明り

【大阪城にて】

淡々とネルケ師と坐す花万朶

(ネルケ無方師はドイツ人、曹洞宗師家)

 

第86回インターネット句会(2023年3月19日)

3月19日

坂本法燈

雨ごとに命あふるる春の候

(居酒屋で食べ終わった皿の隅にひっそりと添えられていた桜の小枝を見つけて)

添えられし花の小枝のうれしさや

桃の木を植えれば人の集まらむ

 

坂本由美子

バフムトの名を記憶せり寒き地の

寒月の真珠の如きまるさかな

温暖化桜の開花早過ぎて

 

 

井内温雄

灘の酒蔵ハイク

サヨナラの勝ち知るゴール花見酒

春月の射し透る縁払暁坐

つちふるや白内障の目に被る

 

 

加藤碩信

病む妻を散歩に誘ふ桃の花

春愁や日々に不慣れな厨事

花のころ要介護2となりし妻

 

 

三原寿典

吉報に芽柳踊るちどり橋

初虹や外つ国人と一の湯に

(「ラーゲリより愛をこめて」を見て)

流氷や引き揚げ船を追ひし犬

 

柏谷絶学

雪しんしん病し息子の家訪ぬ

名は優斗孫生まるるや春の雪

絹さやの花咲き揃ふ紙屋川

 

智常

大あわび海女の凄みを垣間見る

青森のしじみラーメンさえあれば

桜咲くたかが野球で涙せり

 

橘 雅子

花影を袂に写す茶席入る

菓子箱の紐解けぬまま桜散る

瓔珞の揺るる一灯夕桜

 

橘 覚雄

水温む走る部員のノックの音

彼岸会に経本手にする門徒たち

紀の土手で幼き姉妹土筆摘む

 

美乃里

春の山行く手遮る土竜塚

山は早アセビの匂ひむせかへり

()き人と縁を誓ひて風光る

 

土井重悟

格子戸に灯の映ゆる鄙の家

海潮の耳朶に残るや遍路旅

探梅に辿り着きたる谷戸の里

 

森山凱風

白酒を大人の味と少女知る

蛇穴を出でてすぐさまとぐろ巻く

とうに春今年も早う過ぎ去るや

 

 

           

 

第85回インターネット句会(2023年2月23日締め切り)

2月23日

三原寿典
冬木立マラソン選手駆け抜けて
わだかまりそっと溶けゆく春の雪
大津絵の太夫の舞や春の宴
柏谷絶学
大雪やバスそろそろと京の街
探梅やcafeを見つけて一休み
紅白の早梅見つけLINEして

 

坂本法燈

キーウ冬君死にたまふことなかれ

しはぶきぬ幼子の手を握りしめ

朝寝なる至福のときぞまた欠伸

 

坂本由美子

日を浴びてじっと春を待ち焦がれ

咳出ても夢中で遊ぶ孫いとし

雪つぶを幼き指がつまんでる

 

 

智常

子の彼女初めましてに春兆す

海苔で火を撫でるが如き武骨な手

布団干し寝るより楽はなかりけり 

 

 

2月22日

美乃里

トレランの若き足音山笑ふ

凍てゆるみどこからとなく声がして

春山へ哀しきことを置きにいく

 

土井重悟

料峭の愛宕の峯に射す朝日

児等駆ける街の空き地の草青む

春立つやサドルの埃払ひをり   

 

2月20日

森山凱風

春浅し草木の動く気配する

寒行や総身の湯気が立ち上り

 

梅林で渇きを癒す曹操かな

 

2月19日

橘 雅子

芹の香を好む姑桧桶

夜噺の蝋燭揺らぎにじり寄り

蝶が来て蝶の舞々ふ野に遊び

 

橘 覚雄

白き石打ち込む一手春の月

我が庭の梅ほころびを待ちに待つ

米寿なり二月十二日吾産まる

 

加藤碩信

オペ長し待合室の余寒かな

病む妻の六腑潤す蜆汁

病妻の部屋杖の音冴返る

 

2月17日

井内温雄

開講は「己事究明」と寒波来

難儀なるズンバのリズム寒極む

 

春雨やこれもまた良し露天の湯

 

 

令和5年本部新年俳句 関西支部投句者

関西支部関係分:(他は、本文の俳句ページをご覧ください)

(天)生きてこそ苦楽のありて初日の出   加藤碩信

(碩信様おめでとうございます! 一年の計は元旦にあり。)

年始め少し沈んで高く跳ね       世古美乃里

肩に触れ餅花揺らす役力士       土井重悟

老の春左右逢源にじむ墨        橘 雅子

戦一字大筆拂ふ元旦会         橘 覚雄

元朝や物音のする台所         世古智常

生きてこそ苦楽のありて初日の出   加藤碩信

元日や街は琴の音「春の海」      井内温雄

短日に学校引けて子等急ぐ       森山凱風

わだかまる心しずめて初日の出     柏谷絶学

志うさぎ跳ねたる絵馬に秘め      三原寿典

 

第84回インターネット句会(2023/1/22締め切り)

1月22日

三原寿典

流れゆく樹氷の森や汽車の窓

冬紅葉たたら息づく奥出雲

大寒やアヒージョに合ふ赤ワイン

 

 

森山凱風

青空に神馬嘶く初詣

枯芝に命吹き込む時未だ

何事も無き世を望む去年今年

 

 

 橘 雅子

掛花は銘「左義長」飾り上ぐ

卯の年の華やぐ茶席初点前

香を撮む初灯明に佛笑む

 

 橘 覚雄

輪袈裟かけ生きる力で初説法

老の春曾孫膝へににが笑ひ

初旅は友の法要名古屋まで

 

坂本法燈

早梅の香り開くや涅槃境

()のくれし甘き干し柿余韻曳く

かきおこ(牡蠣お好み焼き)に遠きふるさと懐かしき

 

坂本由美子

日差し浴び何だか春が気のせいか

期待増す今年花見に皆で行こ

寒くてはトイレ近くて老夫婦

 

柏谷絶学

蟠る心しずめて雪しんしん

東山三十六峰初霞

冬の雨歌舞練場の跡寂し

 

智常

母ちゃんの固くくっつくごまめかな

新春や遂げて死ぬとは大袈裟か

ホヤないのホヤは七月一月尽

 

美乃里

暮新月母よりおめでとうはなく

笹鳴きを聞きにゆかむや滝の里

大寒に負けてたまるかストレッチ

 

1月20日

土井重悟

客途絶え時雨るるままの嵯峨野かな

凍滝に不動明王顕現す

初場所に大入りの幕垂れさがる

 

加藤碩信

仕来りを省きし老いの去年今年

頼りなきなんじゃもんじゃの冬芽かな

楪に七日の疲れ餅もまた

 

1月18日

井内温雄

亡き父や寒満月の一周忌

新年の九人九様の抱負かな

 

経行は堂縁駆ける寒接心

  

第83回インターネット句会(12月19日締め切り)

12月19日

三原寿典

冬晴れや山陰線はワンマンかー

冬かもめ多数乗り込む遊覧船

雪冠る峰峰眺め足湯かな

 

 

柏谷絶学

【天橋立にて】

鳰遊ぶ阿蘇海波静か

雪の峰映すしじまの阿蘇の海

寒参文殊菩薩に御真言 

 

智常

ああ柚子湯ああ柚子湯かと二度言えり

暦果て五度目のうさぎ歳迎ふ

そのことはぐっと飲み込み年暮れる 

 

 橘 雅子

友へ文感謝を綴り年歩む

祝盃は鰭の酒にて従姉妹会

冬日射す小波映ゆる日間賀島

 

 橘 覚雄

短日や父と語りし我が人生

早朝の吐く息白しランニング

雪吊りや縄張る職の技をみて

 

美乃里

母に今持つて行きたし芋と栗

炬燵中陣取りもなく二人だけ

向かい人北風(きた)といっしょに去りにけり

 

森山凱風 

冬枯れのドライブ独り淡路の灯

水鳥の羽音聞こえぬ闇に鳥

冬の雲乗って向かうは日本海

 

12月17日

井内温雄

世事遠き堂縁の坐や冬銀河

誓願の冬柿二つ去来塚

臘月や母命日の随息坐

 

12月16日

加藤碩信

奥歯二本抜かれしままに年果つる

臘八の徹宵坐禅骨軋む

摂心円了早暁に食ふおでんかな

 

12月15日

土井重悟

満天の星を映して冬棚田

敗残の兵の群なす枯蓮

托鉢の僧の佇む虎落笛 

 

第82回インターネット句会(11月19日締め切り)

11月19日

智常

草を抜く作務の手止まる蓼の花

文化の日凡人にすらなれぬ夜

故郷の月はこの月とは違ふ

 

美乃里

小春日や身の丈の幸これで良し

冬紅葉七福思案腕をくむ

鯛焼きが心ゆるめるオフィス街

 

三原寿典

北の町冬かもめいる交差点

ヤン衆の料理旨しやななかまど

 石蕗や剣道型の美しさ

 

柏谷絶学

蔦紅葉朝日夕日に色を変え

秋風や八幡坂の上に立つ

旧友と登る函館山の冬

 

坂本法燈

鱈白子舌を唸らす板さんや

粕汁の熱き潮に涙せり

冬安居仲間とともに道清む

 

坂本由美子

初牡蠣やみそ汁碗の底に見え

甘酒を待つ孫にジジせっせ混ぜ

コンビニのおでん始まりまためぐる

 

加藤碩信

神鈴の虚ろな響き神の留守

枯芒風あるやうなないやうな

壁伝ふ力弛めず蔦枯るる

 

土井重悟

時雨忌や見果てぬ夢の杖と笠

ほっこりとしなはれこんな小春日は

枯葦に縋る捨舟昏るる湖   

 

11月18日

橘 雅子

金襴の朱帯蝶々に七五三

縁結びダイヤの婚に菊の宴

立冬や祖父の声聞く七回忌

 

橘 覚雄

願かけに出雲大社へ神の旅

報恩講他力を信じ経となふ

凩やビル風となり頬を刺す

 

11月17日

森山凱風

ウオーキング道端の花秋を知り

人の世に秋の日落つる時来たり

秋の夜我も動けず守宮かな

 

井内温雄

みとせぶり懐かし句友時雨の忌

工事止み献句朗詠小春かな

 香煙や翁へ届け小春空

 

第81回インターネット句会(2022年10月23日締め切り)

10月23日

美乃里

どこ行くのちょっとそこまで秋うらら

秋晴るる今日は目指すぞ頂上を

話すこと忘れる母に菊日和

 

とかげ

ただいまと母訪ねたし秋しぐれ

犬小屋に小さき供花水澄めり

長き夜やアプリに同意まだ請わる

 

智常

渋皮を剥く手間たるや栗ご飯

月明の海に亡父は消えにけり

種無しの柿の物足りなさに似て

 

10月20日

森山凱風

秋の夜壁に溶け込む守宮かな

十月は行事に追われ過行きぬ

人の世に秋の日落ちる時来たり

 

10月19日

土井重悟

崩れ簗音のみ残し暮るる里

障子貼る白き指なる若き母

野紺菊汝は民子を知り居るか

 

加藤碩信

起重機のアームの伸びて秋高し

コンバイン獣の如く稲食めり

松茸に栗めし余生惜しむべし

 

橘 雅子

飼葉桶鼻息荒し馬肥ゆる

四方盆客に廻して炉を開く

手をかざし園児の唄ふ落葉だき

 

橘 覚雄

案山子立つ刈り取り終ゆ轍跡

老人会盃たかだかと菊の酒

バラモン凧五島列島秋高し

 

10月16日

井内温雄

去来祭三句

先生に鐘つく里や柿紅葉

奏上の祝詞に応ふ柿紅葉

先生に届け心経柿紅葉

 

第80回インターネット句会(2022919日締め切り)

9月19日

土井重悟

秋暑し泣き止まぬ子は捨てましょか

秋ひでり眦決す若き車夫

敗残の今はの野辺の曼珠沙華  

 

とかげ

露草の青なほ青し女王逝く

栗ごはん失礼しますと杓文字入れ

携帯を置いて散歩へ賢治の忌

 

坂本法燈

寝室のどこかで鳴けりチンチロリン

さるすべり名にぞ似合わぬ可憐花

野分去り季節うつろう夜明けかな

 

坂本由美子

(山上徹也の母に寄せて)

秋近しカルト目覚めぬ母哀れ

ベランダに住みついたりや秋の虫

こう急に下がってもなあ寒いしね

 

 

三原寿典

珊瑚樹や心経の声とよもして

百も彫る心経茶碗や蛍草

入院の母訪えぬまま荻の風

 

智常

真剣な話の窓にすいっちょん

秋の日に母の手に手を重ねたり

龍淵に潜みて一ちゅう香座る

 

美乃里

秋暑し最後に母の爪を切る

不器用に剥き皮残る母の梨

天高くガラス向こうの笑顔かな

 

加藤碩信

兄の忌の九段の坂の残暑かな

白粥に塩一つまみ涼新た

故郷(くに)よりの「おいでまい」てふ今年米

 

橘 雅子

満月や太陽の塔美の呪力

盗人萩ピンクの小花莢に咲く

芒の穂丸め丸めてボール蹴り

 

橘 覚雄

一人酒盃に映つりし真如月

御供を檀家へ分くる衣被

木犀の香に誘はるる散歩道

 

井内温雄

堂縁の夜坐検単に流れ星

流星や今生きるのみ願ひ無し

流星や酒肉を断てず涅槃まで

 

第79回インターネット句会(2022年8月19日締め切り)

8月19日

とかげ

ワイシャツも徐々に馴染んで白桔梗

蜩や母に病名また一つ

亡き人のフィルムケースに朝顔の実

 

美乃里

思ひ出が弾けて飛んだソーダ水

青田波風に道あり匂ひあり

夏痩せの腕に重くエコバッグ

 

智常

扇風機腑分けの如く解体す

船乗りの南国の歌残暑かな

船長さんネシアの海は夕凪か

 

坂本法燈

蝉採りの歓声消えゆく名刹に

百日紅夕日と競い艶やかに

ブルベリー甘酢いおもひでジャム作り

 

坂本由美子

セミ達が虫かごの中大騒ぎ

蝉採りに孫よりババが夢中なり

蝉の殻胸に引っ掛け孫得意

 

8月18日

橘 雅子

段染めに縦糸緋色秋めきて

掴みたし追ふてもみたし秋の雲

手を繋ぎ流星群に出逢し夜

 

橘 覚雄

骨切りのサクサク響く鱧料理

南無阿弥陀家族集へて盂蘭盆会

フルロラに惑へし日々や秋深し

 

加藤碩信

コーヒーの豆挽く香り今朝の秋

飽食に慣れて水買ふ原爆忌

耳遠くなるまで生きて遠花火

 

森山凱風

夏の日の沖縄に死す魂数多

亡き親を心に深く墓洗ふ

秋めきて田圃の緑匂い立つ

 

8月17日

土井重悟

色滲む灯籠の灯の映ゆる川

明けぬればこれぞ浄土の蓮の花

憂さ晴らす如き夕立のあがる街

 

柏谷絶学

試練かな大雨に耐え大文字

継承の意味の重さや五山の火

立秋やツクツクボウシの鳴く古道

 

三原寿典

神々し天から落つる那智の瀧

行合の空に聳ゆる天守閣

手を合わすビルの隙間の送り火に

 

井内温雄

競り負けて校歌を聞くや雲の峰

スコア記す女子のまめなり蝉時雨

 球場の白線の先雲の峰

 

 

第78回インターネット句会(7月25日締め切り)

7月25日

坂本由美子

遥かなり蝉も鳴かないウクライナ

ビニプール忘れ去られて押し入れに

 

坂本法燈

蝉しぐれ安居の熱を煽り立て

草茂り作務の後のすがしさよ

安禅は心頭滅却熱殺す

 

三原寿典

【一保堂にて】

白南風にゆるる老舗の暖簾かな

寺町や薄茶に氷浮かべおり

のみ干せば放たれし鵜の碗の底

 

柏谷絶学

老鶯や見解の叫び届かんか

蝉の声見解示せば無常鈴(リン)

肋折りまた頑張るや夏安吾

 

森山凱風

下肢浸し総身の血沸く海開き

用意した団扇の余る老人会

オンライン息遣いなく夏授業

 

智常

涼しくてやがて悲しき雨の降る

全て切る過去と未来とプチトマト

黄金虫壁にぶつかってもめげず

 

7月24日

美乃里

老ふ母に目頭熱く日からかさ

畦道で母の手取れば田水沸く

母のメモひらがなばかり三束雨

 

7月21日

橘 雅子

白塗りの稚児の冠り鉾祭り

古団扇僧の背中をあおぐ母

宇宙人山椒魚は悲しんだ

 

橘 覚雄

浜風が青田の波を吹き通す

天道虫サンバの曲に乗り移る

過ぎし風夫に献げし百合の香

 

7月20日

井内温雄

位牌手に寺に出向きて施餓鬼かな

戻り梅雨晴間現る二上山

八歳

やうやくに歩けし孫と夜店かな

 

7月16日

土井重悟

彼からの便りも絶えて半夏生

幼児の眼に異様なる蟬の顏

辿り来て夕焼けに染まる熊野灘

 

 

第77回インターネット句会(6月19日締め切り)

6月19日

智常

折れ傘の畳んで差して栗花落かな

紫陽花やこうべを垂れて苔と話()

父の日や子が父になる日を思ふ

 

 

三原寿典

船上にチェロの調べや夏燕

炎ゆ心赤きドレスのオペラ歌手

指揮棒に束の間の静半夏生

 

絶学

夏至の日や人間ドックの結果待つ

早朝に葛切を買ふ六十路かな

ぬばたまの夜を嘆くや雨蛙

 

美乃里

大南風行く人帽をおさえたり

この下に水脈ありと九輪草

今どきは主役となりぬ栗の花

 

坂本法燈

琉球の返還に泣くハイビスカス

ゴーゴーと苺ほおばるおチビかな

道場のどくだみ刈りてにほひ立つ

 

坂本由美子

頼もしい虫除けスプレー孫守る

貯水場幾多の亀がうごめいて

ユリ咲いて植えた母をふと思う

 

森山凱風

紫陽花に誘われ歩く巡礼路

大仏を尻目に子鹿人集め

父の日の親父の涙及第点

 

上田月庵

雨蛙ゴム長に載せ童かな

半袖の二の腕眩し女の子

登校の列に咲きたる傘の花

 

土井重悟

緑陰にニンフ戯れ惑ふ午後
青梅雨にショパンの調べ愉しまん
海鳴りの街を覆ふや五月闇 

 

とかげ

白薔薇父さんと呼ぶ夫の居て

水槽に海月漂う純喫茶

草むしる葉擦れを波の音と聞き

 

6月18日

橘 雅子

母の手を一夜摩りて月祀る

雁わたる輪唱へ追ふリコーダー

次手さす烏鷺の対局秋扇

 

橘 覚雄

井戸端で一手指す駒夕涼し

初鰹大皿つつく解禁日

窓越しの香り鼻つくアマリリス

 

6月17日

加藤碩信

ほととぎす森の茶房のテラス席

結界を苦も無く越ゆる蟻の列

単衣着て粗野といへども卑にあらず

 

井内温雄

梅雨深しポンペイ展の焦げしパン
日銀の総裁に喝梅雨の雷
放映の寺へいざなふ夏柳

 

特別投句: 坂本法燈の7句(2022519

黒きバラ戦地に咲けり人の科

灰のバラ髑髏を抱き咆哮す

縞のバラ阿鼻叫喚の地獄絵図

青きバラ天地に満てり涙河

赤きバラ心癒せり陽は昇る

桃のバラ若き大地の礎ぞ

白きバラ衆生を包む永久の国 

 

第76回インターネット句会(5月22日締め切り)

5月22日

三原寿典

鯉幟百匹泳ぐ麦畑

夏来たる秦の香炉の透かし彫

雨音や釈迦牟尼仏の御座す堂

 

柏谷絶学

竹生島船の白波夏立ちぬ

奮発の鰻味はふ余呉湖かな

あをによし奈良の特急新車両

 

美乃里

苔岩を玉座にしたり柏餅

誰そ知る躑躅群生ひとり占め

夏浅し白溢れたりウツギ谷

 

坂本法燈

紫陽花の弾む笑顔に朝日の出

いかづちや豪雨と共に都市封鎖

甘酒の熱き香りに人恋しかな

 

坂本由美子

ベランダの紫陽花を見て季節を思う

思い出すゴキブリ団子買わねばと

わずらわし半袖・長袖どちらなの

 

5月19日

上田月庵

老妻の皿に添えたるカーネーション

カフェテラス緑に染めし五月雨

さ緑の一粒滴る木の葉かな

 

 

土井重悟

肩の子も弾む社の競馬(くらべうま)

新緑の田面に映ゆる谷戸の里

カンダタの目の前はらり蜘蛛の糸

 

橘 雅子

磯馴木の横たふ松へ寄する波

子供の日歌を学びし夢およぐ

ひと雨に垂れる蔓薔薇紅雫

 

橘 覚雄

布団蹴り薄手の麻を腰にまき

八十路越へ端午の飾り孫も慶し

眼をとじし新樹に光る吾心

 

智常

涼風にタイミングよく振り返り

通勤路日陰を探す夏のきぬ

五月晴れ走るが如く歩きけり

 

加藤碩信

緑陰のベンチで食べる握り飯

葉桜やわが人生も晩節に

年毎に背丈の縮む更衣

 

とかげ

唄うなら子守唄かな姫女苑

白磁器に翡翠のような胡瓜揉

三省堂神田本店不如帰

 

5月18日

森山凱風

衣替え白が眼を射る通学路

わけもなく涙する五月また来る

川縁の葉桜眺む好々爺

 

5月17日

井内温雄

酒なしの三年ぶりや奉扇会

白扇の導師に添ふや花菖蒲

放映の話しそこ此処奉扇会

 

第75回インターネット句会(2022年4月19日締め切り)

4月19

坂本法燈

こでまりの嵐の中を学校へ

菜種咲く伊部の里の登り窯

艶やかに恥じらい残し落つ椿

 

坂本由美子

ただの枝ある日桜にへんし~ん

ほら桜叫べども孫しらんぷり

(コロナで連れ出せず)

桜咲きホームの母を思えども

 

柏谷絶学

禅堂の庭で老鶯よくな鳴けり

老鶯と坐るや午後の静座会

禅定や経よみ鳥に試されて

 

森山凱風

フィルム撮り現像待つ間桜餅

木蓮の一輪毎の仏様

身に染むや句作の苦労暮遅し

 

4月18日

橘 雅子

嬉しいこと哀しこと観る桜さくら

花御堂釈迦の微笑み輪念珠

蜆蝶上下左右へ翅の舞ひ

 

橘 覚雄

児を集め優しく説法花まつり

軒下に親待つ五羽の燕の子

花冷えやキーウの街を想ひたり

 

智常

爆撃の空は再び陽炎ひぬ

なんだっけ菜の花を指す女学生

思い出を全て捨て立つ春深し

 

美乃里

白杖の代わりになりぬ花の朝

花筏すき間に雲の流れけり

気がつけば桜の葉擦れ心地良く

 

加藤碩信

壁の服皆くたびれて啄木忌

藤の房まだ幼くて棚の上

植物園名札貰へぬ犬ふぐり

 

4月17日

井内温雄

【飛鳥川】

川白く覆ひ尽くすや花筏

【事故現場】

立看の募る目撃春霞

澄み渡る春満月や払暁坐

 

とかげ

汁の実はいつもの若布勝負飯

吾子の住む街を素通り山帰来

部活終え君と見たあの花をまた

 

土井重悟

花の枝の伸びて堤下の人小突く

泡沫は流れのままに春の逝く

銀輪の群を抜きさり風光る

 

第74回インターネット句会(2022年3月21日締切)

3月21日

三原寿典

花粉症ライン・メールもできぬまま

金継ぎの黒天目や柳の芽

望楼に美しき比叡と春疾風

 

橘 雅子

訪ね来よ招華一枝里桜

乳母車桜の下でひと休み

花冷えや見舞ふ夫の腰かがむ

 

橘 覚雄

雛祭りままごと遊び三姉妹

蓬つみ綿毛ほぐし祖母に灸

泥中にコッツンと当る蜆殻

 

坂本法燈

地底より迸しいずる土筆かな

水温みチビッ子転げる河辺かな

孫つみし土筆の味はほろ苦し

 

坂本由美子

味わうよつくしとよもぎの天ぷらを

きらきらと水面輝き春を待つ

桜見てはしゃぐ大人に孫クール

 

智常

鍬振りて腰を伸ばせばあたたかし

固い意志眼球にこそ蛍烏賊

妻のこの寒芍薬が咲きにけり

 

美乃里

桜餅二人で食みて葉が一片

摘草や少女の母が蘇る

雪起こし初めて咲きて庭あかり

 

3月19日

とかげ

お彼岸や布巾一枚新調す

クリックす花見の予約先着順

ミモザ咲き人道支援コンサート

 

土井重悟

湖の子や比良八荒に潜む秘話

朝陽射す軒を掠める初燕

切株に腰を下せば初筏

 

田倉明眼

ミモザ負い道を歩むや老いた足

キンセンカ妻孫守に旅立てり

 

柏谷絶学

春を待つ天神川の畔かな

春遅しまだかまだかと聲聞こゆ

春浅い三井家の庭季語探す

 

森山凱風

白酒を楚々といただく女児の顔

啓蟄の虫出で我も旅に出る

春の空この世はすべて夢の中

 

上田月庵

やはらか陽鶯の声未だ弱し

雛人形眼を見開いた怖さかな

透析の針太くして春淡し

 

加藤碩信

支へられ欅老樹の芽吹きかな

大欅の樹霊を覚ます春一番

啓蟄やメトロの駅に人群れて

 

3月17日

井内温雄

【高取町 町屋雛めぐり】

文久の夫婦の品や雛めぐり

筒(つつ)差しの梅明るうす軒の下

哭く嗤ふ人面石や雛の町

 

 

第73回インターネット句会(2022年2月23日締め切り)

 

2月23日

柏谷絶学

春雨に濡るる吉田の山静か

春の池烏は餌を取り合ふて

春雨の大元宮で手をつなぎ

 

三原寿典

ビル街に春の光の谺する

風花やゴールへ向かふ登り坂

白梅や苦役列車の停まりをり

 

坂本法燈

初日の出チビッ子凛たりわれここに

公園のベンチ住む人春となり

冬銀河地上のいくさを笑いけり

 

坂本由美子

パシャパシャと水蹴散らして鴨群れる

キラキラと川面光りて春近し

男孫ピンクてぶくろお気に入り

 

田倉明眼

駅前にカレーの匂い春間近

幼子と追いつ追われつシャボン玉

春風や孫来る前に豆を煮る

 

智常

あの頃はみねちゃんで酒飲んで雪

万両やひと枝挿せばずっと赤

冬萌や薬飲んだか忘れけり

 

美乃里

ありがとう冬の感動ありがとう

何もかも白息吐いて手放して

伸ばす手のエサ取りに来る冬鳥よ

 

 2月20日

加藤碩信

芽柳に風やはらかし雨情の碑

春光のほかは纏はず乙女像

セロリ嚙むパリと音して春立ちぬ

 

森山凱風

早春の薄墨のごと山の影

着ぶくれて体型隠し初デート

冬うらら店先のっそり主顔

 

土井重悟

国境の凍土に不戦の誓ひ在れ

春浅き比叡の峯に朝日射す

実朝忌落日猶も燃え尽きず

 

とかげ

菜の花忌昭和一桁父偲ぶ

日曜の春セーターは空の色

春の雲己が機嫌も取れぬまま

 

2月19日

上田月庵

節分の豆持て余す八十路かな

プライドのクワッドアクセル清清し

3回目ワクチン終わり日脚伸び

 

橘 雅子

菜の花に岩塩少々預け鉢

枝ゆらぎ番でつつく梅蕊

雅楽聴く五人囃子に緋毛氈

 

橘 覚雄 

初午に五穀豊穣巫女の舞

草履音や僧の行列寒の明け

中庭のホーホケキョに目覚めけり

 

2月17日

井内温雄

立春や僧と駆け込む独参場

【講了】

制末の師の突き落とす杖子(じょうす)かな

制間の治らぬ痺れ霜焼けよ

 

第72回インターネット句会(R4(2022)年1月19日締め切り)

1月19日

三原寿典

湿原に幸を呼ぶかな座禅草

九十路の母に似てると初写真

奥嵯峨に祇王の悲恋寒牡丹

 

美乃里

密やかに蝋梅の香庭のすみ

母曰く雪の降る日に生まれけり

厳寒と全集中でむかいたり

  

智常

思わずに湯婆(たんぽ)のありて手を合わす

とぼとぼと重い大寒通勤路

氷下魚買ひ今日は昭和の酒とする

 

柏谷絶学

大寒や散髪すればひしひしと

淑気満つ吉田の山の隅々に

白髪の老女の歩み細雪

 

上田月庵

願わくば米寿まではと去年今年

薄っすらと雪の積もれるボンネット

老妻と二人で囲む小豆粥

 

とかげ

牡蠣料理ぷっくり加減をまた逃す

眠れぬ夜いいじゃないかと冬満月

父の忌にかくも美し冬朝日

 

土井重悟

榾爆ぜて顕る翁神に舞ふ

肩に触れ繭玉揺らす役力士

蕪村忌やメルヘン句在に指折りぬ

 

1月18日

橘 雅子

夜咄の手燭差し出し炭爆ぜる

行平の七草粥に母の箸

善哉を振舞ふ寺の初写経

 

橘 覚雄

初空に無量寿経を轟かす

七草粥疎開の味を思ひ出す

独楽まはす幼き日の技八十の笑み

 

森山凱風

ゆかしきや鳴けども見えぬ初雀

初春や清々しきは巫女の舞

冬山の嵐の如き大葉擦れ

 

加藤碩信

初雪やペンギン歩きして医者へ

妻病めば男もすなる初厨

初笑ひ昇太の笑点裏話

 

1月16日

井内温雄

若返る亡父(ちち)の湯灌や宵戎

【父の葬儀】

追悼の句の身に染むや寒の雨

亡父(ちち)と行く葬送の道氷雨かな

 

 

第71回インターネット句会(2021年12月19日締め切り)

12月19日

坂本法燈

 木枯らしや川面吹き抜け心痛し

烈風の暗き川面に鴨の鬨

底なしにミカン頬張る孫二匹

 

坂本由美子

あつあつの牡蠣こじ開けてほおばりて

銀杏葉の黄色絨毯孫駆ける

 

お年玉用意せねばと孫思う

 

三原寿典

走りゆくトナカイの影冬の月

白息や美瑛の丘に星の降る

落柿舎や月に照らされ木守柿

 【特別追加】

ハイカラで虚子驚きし奈良ホテル(季語なし)

 

本庄慈眼

 ゆず風呂にこの一年を流しけり

 

とかげ

子ら育ちクリスマスツリー小さくなる

亡き義母に今更聞きたし年用意

冬の雷先延ばしする我を打つ

 

智常

年賀状今は虎彫る人となる

餞別も風も荷に詰め年暮れる

職場去る挨拶のメモ寒の入り

 

美乃里

臥雲橋なごり紅葉の美しき

炬燵中足投げ入れど腰寒し

カップ麺カイロで蓋す六箇山

 

加藤碩信

口明けて目薬をさす小春かな

薬飲むための食事や漱石忌

コキと鳴る膝や勤労感謝の日

 

森山凱風

粕汁を飲み干して尚頭あり

仕込み済み主振る舞う年の暮れ

独りして焼べる木眺め年惜しむ

 

橘 雅子

炭の尉くずれ行く刻音も無し

散蓮華おでんの汁でからし溶く

手焙りをすすめる女将背丸し

 

橘 覚雄

大晦日阿弥陀如来に帰命せり

和やかに鴨鍋囲む古暖簾

日向ぼこ笑いの内に友つくる

 

井内温雄

隙間風僧には吐けぬ貪瞋痴(とんじんち)

【ヨガの死体ポーズ】

縁側やシャバアーサナの日向ぼこ

【とある寺の警句】

生きてゐる今ぞ大切年の暮

 

田倉明眼

【LINE静座会にて】

海鳴りと坐る湯治場朝寒し

氷雨止む洪渺と在り枯れ木灘

観音に会う旅ならん落ち葉踏む

 

12月12日

柏谷絶学

冬の月微かにこぼす竹の道

落柿舎の柿の実のなる夜空かな

雪婆ゆらりゆうらりふうわりと

 

土井重悟

古稀越えて散紅葉踏む町石路

雪模様蛇の目行交ふ京町屋

顔見世や白き足抱く雁次郎

 

 

第70回インターネット句会(締切11月23日)

 

11月23日

三原寿典

小六月番(つがい)の鴨の描く澪

初時雨蕉翁の曳く杖の音

永久(とわ)に舞ひ光る紅葉や貴船川

 

智常

 杖を持つ手に手を重ね秋深し

 身辺の整理を秋が求めけり

 父母未生以前の富士の雪化粧

 

美乃里

父の前似た顔揃う菊日和

自転車のかごに落ち葉をつれ帰り

強烈な紅葉色なり地獄谷

 

坂本法燈 

友と生き友と涙す冬安居

 臘八に垣間見得るは友の情

牡蠣鍋に時は移ろい夜もすがら

 

坂本由美子

日向ぼこ座り込んだら動けない

後追いで冬物コート探してる

待ち切れぬパパ剥く蜜柑孫ぱくり

 

橘 雅子

お下がりの剥き役は母ラフランス

釜の鳴り松籟を聞き炉を開く

実り待つ畑にうずめし落葉搔き

 

橘 覚雄

 お茶の花ひと花ごとに渋深む

 深々と落葉の音に癒されし

 立冬にラジオ体操深呼吸

  

柏谷絶学

牛若の走りし道や冬木立

 終活の意味犇々と冬柏

 【瀬戸内寂聴逝く】

 寒雷に打たれて君を好きになり

 

11月22日

 加藤碩信

 銀杏散る明治の薫る文具店

 交番の奥の二畳に蒲団かな

 露座仏の肩は遊び場寒雀

 

11月19日

 森山凱風

 猫の腹陽射しにきらきら初冬かな

 芭蕉忌や今も昔も旅心

 新海苔の黒々としてショウケース

 

とかげ

 はや二年御会式桜なほ清ら

 白い鳥黒い鳥をり冬の海

 冬の雲錆びたトタンを超えて海

 

11月17日

井内温雄

[圓福僧堂]

 日天の僧掃く門や紅葉濃し

 [坐禅研修会]

 究極の坐はやすらぎや雪安居

 小春日や弟背(いろせ)まします二上山

 

11月11日

土井重悟

木枯を友とし往くや旅の僧

小春日や伊根の内海に鳩の舞ふ

 しぐるればぽつねんと見る軒しづく

 

第69回インターネット句会(2021年10月19日締め切り)

10月19日

坂本法燈

朝寒に急かされ羽織る心地良さ

枯枝にブーゲンビリアまた咲けり

秋刀魚骨喉外れ孫生き返り

 

坂本由美子

買ってきた菊鉢かかげ嬉し気に

虫の音がしみじみ齢を思わせる

長袖をあわてて探す冬隣

 

智常

葡萄食べながら聞くなと父として

ずいぶんと食べておらぬは栗ご飯

無花果を干して眺めて食べぬとか

 

美乃里

秋の夜に正しく背骨積み上げて

秋天を突く頂上に人のあり

娘来て話止まらぬ夜長かな

 

三原寿典

菊花展幼き我()の手引きし祖父

秋の蝶憂ひを帯びて猶美しき

(『ONODA一万夜をこえて』を見て)

木の実食み三十年の忠誠心

 

柏谷絶学

今宵こそ拝みたしとて後の月

今宵また雲隠れにし十三夜

そぞろ寒明日の上着を取り出せり

 

加藤碩信

補聴器に身に入む音や水琴窟

爽やかや扁平足の観世音

流星や南溟に兄眠りをり

 

10月18日

森山凱風

煌々と照る新月に手を合わし

友辞して我寂しむや秋の夕

古家のトタンを熟柿赤く染め

 

とかげ

刈田焼く真白き煙握り飯

君推しのネットフリックス夜長かな

秋桜まだ母であり娘でもあり

 

土井重悟

獄卒の赤き舌なる曼殊沙華

敗荷を車窓に認め旅の果て

御命講味にうるさい庵主様

 

井内温雄

向田邦子没後四十年

書き上げし寄稿エッセイ虫すだく

リーグ戦辛勝の報虫の秋

願掛けの望月拝す入院日

 

10月14日

橘 雅子

掻き上げし灰の乱れや風炉残り

達磨忌に世俗問ふても無答なり

葉がくれに一輪咲し杜鵑草

 

橘覚雄

縁側で孫も手伝ふ障子貼り

色鳥や庭に幸せ運びけり

土手沿いの野菊の彩は君なりき 

 

第68回インターネット句会(2021年9月19日締め切り)

9月20日

三原寿典

俗世(ぞくせい)でまだ遊びたき穴惑ひ

三角点色ろなき風と辿りつく

大都会ビルの跡地にねこじゃらし

 

田倉明眼

リハビリの道に揺れおり曼殊沙華

 

とかげ

旋盤の音軽やかに秋澄めり

おかえりと大海原のごと稲田

あの甥も父になるらし秋うらら

 

坂本法燈

コスモスに心洗わる雨続き

遠き寺至り来たれば孔雀草

水澄みて魚行き天に鳥わたる

 

坂本由美子

風呂上り窓辺に寄れば虫の声

薄布団二枚重ねて秋だねえ

田舎よりピオーネ届き姉の顔

 

美乃里

秋の蝉大やかましのウツギ谷

白帝の機嫌よろしく空綺麗

本日は風の爽やかに誘はれて

 

智常

なぜならば秋分の日に生まれたり

月を背に告げねばならぬことのあり

ちちろ虫音()より匂いの記憶あり

 

柏谷絶学

名月や見頃の時刻(とき)は雲の上

白くても我は我なり百日紅

名月や土星木星従えて

 

9月19日

森山凱風

秋出水及ばぬ人智生死分け

恨めしき不眠の我が身長き夜

穏やかに妻と味わう秋の声

 

橘 雅子

清やかなる名月眺む太鼓橋

鹿の子のひとり歩きよ糞ふみて

学び舎は遠くになりて木の葉髪

 

橘 覚雄

名月や佛に語る娑婆のこと

碑を拝す生国魂神社西鶴忌

期限切れ食品ロスの冷ややかさ

 

加藤碩信

両腕なき少女の泳ぎ大天晴れ

机なき妻も燈火を親しめり

秋扇ゆったり使ひ聞き上手

 

9月17日

土井重悟

松嶋屋若き名取の秋袷

ちろろ追う少年の夢今如何に

街外れ二胡の響きや愁思聞く

 

井内温雄

恵贈の句集繙く夜半の秋

だんだんに夜明けの遅し身に入む坐

望月夜万葉集を詠みあげて

 

第67回インターネット句会(2021年8月19日締め切り)

8月19日

坂本法燈

中元に昔懐かし友の文

(品物だけではなくて手紙も添えてあると、嬉しいですね。それも、古い友達からなら尚更です。秀句ですね。)

祭り無く踊り子たちの悔し舞

栄西忌禅に出会ひてこの日識る

 

坂本由美子

長靴の出番がないこの夏は

扇風機揺れる風船追う孫よ

(風船は春の季語なのです。)

幼き手かぶと虫のせ得意げに

(お孫さんの様子が目に浮かびます。いい句ですね!!)

 

柏谷絶学

副反応六道参りふらふらと

(モデルナの副反応、たいへんでしたね。やっと、元気になってよかったです。)

大文字熱にうなされ点火待つ

◎篁(たかむら)と閻魔参りや夢現

(熱にうなされ、夢うつつの六道参りの中で閻魔様に逢いましたか?)

 

智常

半開き扇子ぽつんと忘れおり

(季語「忘れ扇」を取り入れた、写生句。「忘れられ」とした方が、自然なのではないでしょうか。)

ソーダ水あの子ワクチンまだだって

(あの子のこと、心配ですね。)

秋立つや在宅をせよ俺は出る

 

美乃里

盆が来る思い出すのは父のこと

夏の果て奇異な冷酷国の果て

(これから先、不安なことは多いですね。)

(コロナのことで大変不安になっているのでしょうか?句によく表れています。)

手のシャボン銀河のなかへ吸い込まれ

(詩情ある句ですね。)

(一見するととてもいい句なのですが、よくよく読み解くと、シャボンの中に銀河があるのか、シャボンが宇宙の銀河に吸い込まれるのか、よくわからなくなります。)

 

三原寿典

晩夏光本紫の僧の袈裟

(晩夏光が聞いています。紫の袈裟を引き立てています。大阪の茨木市の総持寺に行ったときの句だそうです。)

百畳の堂に赤子の三尺寝

(“三尺寝”の季語は、絶滅危急季語だそうですね。)

旨き酒大文字の火待ち兼ねて

(今年の大文字も残念ながら六点灯るだけでしたね。)

 

8月18日

森山凱風

打上げに職人の意気夏盛り

(いい句ですね、夏盛りが効いています。)

朝顔に送った人の影残る

(美しい句です。送った人は、どんな人だったんだろう~読み手の思いをそそりますね。)

コロナ禍の命儚き夏の過ぐ

(いい句だと思います。「コロナ禍の儚き命夏の過ぐ」と体言止めにすれば切れが出来てもっといいですね。)

 

橘 雅子

新盆に姉忘れ逝くこけし笑ふ

(「新盆に亡姉(あね)の忘れしこけし笑む」としてはいかがでしょうか。)

簾越し茶がゆすすりて梅二つ

(なんだか、とても風情を感じる句ですが、季重なりですね。)

くるり巻く蓮の浮葉に母の面

 

橘 覚雄

古宿や休む縁側秋来る

(「古宿や佇む縁に秋来る」でもいいかもしれません。)

長き穂の供え一束溝の萩

老木の蜩の声まねる児等

(老木と児の対比が良いと思いました。蜩は、どことなく淋しさを思わせますが、この句では、そこに楽しさとユーモアをプラスしています。素敵な句です。)

 

土井重悟

青瓢蔓は切れそで切れはせぬ

夜遊びの吾に夕顔ひそと笑む

(どんな夜遊びなのでしょうか?)

死の月山蘇生の湯殿辿る夏

(月山に行ってこられたそうです。芭蕉も尋ねし月山!すばらしい思い出になりましたね。)

 

8月17日

加藤碩信

老師逝く九十五歳夏最(さ)中

(千獃庵老師を私は直接存じあげなかったですが、素晴らしい老師だったことが伝わってまいります。)

納棺の師のかんばせの涼しけれ

終へてすぐネクタイはづす夏の葬

 

井内温雄

新涼や夜船閑話を熟読す

(白隠禅師の夜船閑話、軟酥の法のお話ですね。熟読されたとは、すばらしい!私たちは、関西道場の歴史散策で白幽子のお墓に参りました。)

新涼や朝の健診心電図

(心電図は、正常だったのですね。)

[森下洋子 新白鳥の湖]

鍛練の七十年や涼新た

(すごいですね、70年続けることだけでもすごいのに。)

 

第66回インターネット句会(2021年7月19日締め切り)

7月19日

智常

誤りてメロン芽抜きて謝りぬ

(洒落かな~駄洒落かな~)

麦わら帽風に飛ばさる女の子

バス停に日傘美人の佇めり

(さらっと詠まれていて、美しい句です。どこのバス停かな~と、考えてしまいます。)

 

坂本法燈

安居明けハイビスカスのあざやかさ

(安居は夏の季語、ハイビスカスも夏の季語です。)

紀州路の寺を巡りて雨安居

(梅雨の時期の安居の雰囲気が出ていますね。雨安居は、「うあんご」と読ませた方がいいですね。)

蝉しぐれ昨日の悲しみ透り鳴く

(「蝉しぐれ昨日の悲しみ澄み透り」としてはどうでしょう?ただ、“悲しみ”という言葉が重すぎるような気もいたします。)

 

坂本由美子

惹かるるはのうぜんかずらその姿

夏来たり川面跳ね行くボートかな

(いい句なのですが、ボートが夏の季語なので、季重なりとなってしまいます。

ボート・・・夏の季語、 競漕、ボーレース・・・春の季語、 ややこしいですね!)

梅雨明けて洗濯物もからりとす

(ほんと、そうですね。もう、2時間ほどで乾くようになりましたね。)

 

上田月庵

あれも未だこれも未だにて夏至来る

(そうですね、やり残したことはたくさんあります。)

梅雨明けはもう直ぐらしく雲動く

滝音の風になりたる箕面かな

(箕面の滝の前のベンチにいると、ずっとここに座っていたい氣持ちになります。詩的で、涼しさを感じる素敵な句ですね。)

 

美乃里

白腹を見せて飛び込む青蛙

(素晴らしい観察力!)

青梅雨や雫あつめて滔々と

(木々の葉に降る青梅雨が集まってやがて大河となる様子が表れていますね。「あつめて」が、ひらかなにされたところがいいですね!)

ひとつどぞ顔まるくなる大葉かな

 

井内温雄

[西宮海清寺]

煩悩を摘むが如きや草むしり

(流石の境地です。)

本堂の真向法や蚊の餌食

(真向法のときだったら、蚊をたたいてもいいけど、静座のときはたたけませんね。)

[アメイジング-グレイス:アレサ-フランクリン]

熱唱のアレサの映画梅雨晴間

(この映画、見られなくて残念に思っています。)

 

柏谷絶学

初蝉や山あり谷の年を経て

(これからは、平穏かな~ まだまだ、先は長いって、自分で言うたはったけど~)

ワクチンの痕の痒さや蝉時雨

(たいへんやったようですが、ご無事で何よりです。)

蓮咲いて浄土の如き戸口かな

(咲き終わった後、新しい葉の出てきた鉢で、メダカを飼っているとのこと。

また、来年も綺麗に蓮が咲きますように!)

 

7月18日

三原寿典

五月雨の閉店の文字濡らしけり

(コロナで、沢山の飲食店が閉店しています。悲しいですね。)

大津絵の鬼も行水うだる午後

(後で「大津絵の鬼の行水炎ゆる午後」と、推敲したそうです。(絵や作品の中の物は、季語になりません。だから、最初の句の行水は、季語になりません。それで、「炎(も)ゆ」という夏の季語を入れたそうです。)

夏つばめ貨物列車の通り過ぐ

 

森山凱風

遠雷や干し物取り込む反射かな

句の意味は、よくわかるのですが、切れ字を二つ使っています。

「遠雷や干し物急ぎ取り入れて」 では、どうでしょうか。)

夕立は子等の遊びの邪魔になり

パラソルで他人の悪口遮らる

(意味深げな一句です。)

 

橘 雅子

焼茄子を削く指先の水脹れ

(「削く」は、むく と読むのであれば、「剥く」の方がわかりやすいのではないでしょうか。

「さく」であれば、「割く」または「裂く」がわかりやすですね。)

よく見れば達磨の胡坐山の芋

(山の芋が達磨大師の胡坐に見えたということですね。「達磨の」とされたところが、さすがだと思いました。)

[父の戦争中の語りは戦地の竹伐りて尺八を作り、吹いた話でした]

激戦地竹伐りて吹く日本の音

(美しい音色だったことでしょう。)

 

 橘 覚雄

初取りや紫色の長茄子

段々と下に拡がる青田かな

(素直な句です。光景が目に浮かぶようです。)

炎天下僧侶足どり遅れがち

 

とかげ

泰山木花惜しげなく伎芸天

夏燕八十路の母の待つ郷へ

(夏燕と自分を重ねてるようにも読めますし、コロナ禍で自分は母のところへ行けないけど、夏燕に代わりに訪ねてほしいということのようにも取れますね。)

花言葉は母の愛とふ苔の花

(とふてふ でしょうか。「という」の意味ですね。)

 

土井重悟

空蝉や魂抜けて猶落ちもせず

(なるほど。意味深げな句のような~)

水垂(しだ)る蜘蛛の巣に射す朝日かな

(とても、美しい場面の描写ですね。蜘蛛の巣蜘蛛の囲 と、されてもよかったかもしれません。)

靴紐を確と結んで雲の峰

(どこに行かれたのでしょうか。)

 

7月15日

加藤碩信

梅雨ごもりコロナごもりに男饐え

(「こもり」が重なっているところが、面白いですね。女性に嫌われないように(笑))

行きずりの雲に乗りたるあめんぼう

(水面に映った觔斗雲に乗った水馬!)

漂ひて無為を楽しむ海月かな

(無為を楽しむ、将に禅の境地ですね。)

 

第65回インターネット句会(令和3年6月19日締め切り)

6月19日

本庄慈眼

[妙心寺東林院にて]

茶のんで去る人となり沙羅の寺

(喫茶去! さすがです.)

落花して十方うずめん沙羅双樹

地にかえる花受け止める大きな手

(良い句なのですが、俳句では「花」と言えば桜のことになってしまします。

「地に還る姫沙羅の花受け止める」では、いかがでしょうか。)

 

坂本法燈

父の日を祝われ想ふ人の情

(法燈さんの優しい温和なお人柄で、ご家族みんなにお祝いして頂かれたのだと思います。)

年だねと笑い飛ばすも脂汗

(汗と同じく、脂汗も夏の季語です。なんだか、俳諧味のある句ですね。)

一年を彩り終えるマリーゴールド

 

坂本由美子

梅雨明けだワクチン打ちてコロナ明け

(そうですね。これでコロナが明けたら嬉しいのですが・・・)

[折角の差し入れに]

私好きアメリカンチェリー母嫌い

(中七が八文字となっていますが、あまり気にならないし、面白い句に仕上がっていると思います。)

孫二人水無月祝うバースデケーキ

(バースデーケーキの代わりに水無月でお孫さんお二人のお誕生日をお祝いしたということですね。字余りが多いので、少し俳句らしくしてみました。「水無月や祝ふ孫らの誕生日」)

 

智常

葉桜やいつも味方のようであり

(葉桜って、花の咲いてる頃より一歩成長した段階のようにいつも感じるのですが。

強い味方ですね。智常さん独特の感覚ですね。私共には今一つ分かりません。)

父の日や何事もなく歯を磨く

(父親は寂しいものです。)

アメンボはアメンボなりの苦労あり

(これも残念ながらよく分かりません。難しい!なかなか智常さんの境地には到れません。たぶん,智常さんには大変いろいろな苦労があるのだと思います。しかし,気楽に生きていそうなアメンボでも苦労はあるのだろうな,,,てなかんじでしょうか。 アメンボより,,,)

 

美乃里

お地蔵にリユック預けて新茶摘む

(いい情景ですね。ほのぼのしたものが伝わって来ます。美乃里さんらしい句だと思いました。)

法法華経夏鶯や嫁まだか

(老鶯の鳴き声にこの漢字を当てたところが、いいですね。)

紫陽花が主役となりぬ小さき庭

 

上田月庵

小糠雨なほ色濃し七変化

(いい句なのですが、中七が字足らずに見えてしまうので,「濃ゆし」としましょう.)

薫風や久々に回ふ観覧車

二回目のワクチン終わり梅雨晴れ間

(ワクチン接種を終わられての安堵感と梅雨晴れ間の季語がよく合っています。)

 

とかげ

[作曲家小林亜星氏の逝去を知って]

夏木立口笛を吹きどこまでも

(綺麗な句に仕上がっています。)

[絵本作家エリックカール氏の逝去を知って]

夢描き「はらぺこあおむし」夏蝶に

撫で牛を守る御土居の青楓

(北野天満宮の青紅葉を見にいらっしゃったのでしょうか。抗菌加工された撫牛ですね。)

 

6月17日

森山凱風

枝分れ庭はジャングル梅雨明けず

(梅雨で、お庭のお手入れ、草抜きもできないままの状態。よくわかります。梅雨が明けると、また暑い中でのお手入れになりますね。どんなお花が咲いているのでしょうか。)

七変化白に始まり青を成す

冷そうめんつるり飲み込む瀑布かな

 

加藤碩信

東山三十六峰五月雨るる

(流石センスが良いですね.「東山三十六峰余寒かな」,私が昨年三月に詠んだ句です.なにか通じるものがありますね。)

ワクチンに右往左往や五月尽

(時事句。今の現状を端的に述べられています。)

梅雨寒しブラックコーヒー熱く濃く

(違いが分かる男の一句,♪ダバダー,,,)

 

三原寿典

光満つ厨の窓や花珊瑚

(キッチンの窓から、珊瑚樹の真っ白な花が見えているようです。また、赤い実ができて、それが黒くなっていくのが楽しみですね。)

()の撒きし莢豌豆の鈴なりに

(どのようなお料理にされたのでしょう。)

紫陽花や水琴窟の透きとおり

(水琴窟の「音」としたほうが、わかりやすいですね。「紫陽花や水琴窟の音の澄みて」としては、どうでしょう。)

 

柏谷絶学

梅雨の猫石灯籠の火袋に

(雨で、灯篭の火袋に雨宿りする猫を句にされたところがいいですね。)

残されし時を嘆くな蝦夷の蝉

(北海道の夏が短いことと,人生に重ねていらっしゃるのですね。)

蛍去りLEDの靴光る

(最近は子供の靴にLEDがついていて,歩く度に光りますね。やはり、蛍に会えたほうがいいですね。)。

 

井内温雄

僧堂は一日二食明易し

年金の身にはお粥と冷奴

(健康にいいですね。冷奴には生姜と鰹節をつければとても贅沢です。)

不器用なプール歩行よ梅雨晴間

 

橘 雅子

幾年の御魂を抱く弘法忌

天空に高野槙萌す新樹光

掛軸に紙魚の道あり一文字

(風流な句ですね.)

 

橘 覚雄

明易しステンドグラス光満つ

(夏の早朝,ステンドグラスに朝日が当たる光景,眩しくて目を細める。)

樹上にて夜も大声雨蛙

泥中に右手に早苗ギューと植ゆ

 

土井重悟

子つばめの口の大きさ競ひけり

(競っているのは,口の大きさではないでしょうが,そう見えますね.)

繁る葦舳先に分けて進む舟

(葦の繁る湖に;舟を漕ぐ、墨絵のような光景が目に浮かびます.)

水槽の水母見上げる銀行員

  

64回インターネット句会(519日〆切)

519

智常

路地裏の十薬の笑み神楽坂

(「笑み」という言葉がいいですね。)

はよ渡れ立夏の猫の無事祈る

母の日の子のプレゼント妻に聞き

(いつも、みのりさんと仲良しの智常さん!)

 

とかげ

最速のついり亡き師はいかに詠む

(炭﨑先生なら~と、考えてしまいますね。)

この五月君無事であれ無事であれ

母の日は母亡い君の母たらむ

(愛情たっぷりの句ですね。)

 

坂本法燈

梅雨空にじっと待つ身のコロナ危機

天界と魔界貫くいかづちぞ

(ダイナミックであり、奥深い表現ですね。お見事です。)

紫に心洗わるクレマチス

 

坂本由美子

夏草や行く手はばまれ立ちすくむ

葉桜やふと見上げれば青々と

半袖の孫腕出してぷくぷくと  

(お孫さんをかわいがってる様子がよくわかります。)

 

佐藤泰仁

見上ぐれば愛宕の社目に青葉

 (久方ぶりの投句嬉しや)

海舟墓洗足池に初夏の風

新緑の松蔭神社伸ぶ背筋

(緑の中の神社をお参りして、背筋がピーンを伸びる思いがする・・・よくわかる気がします。)

 

上田月庵

リトリート終わりて清し楠若葉

風鈴はブッダの歌かリトリート

(詩情溢れる句です。)

霾るや病の行くへ定まらず

(季語の「霾る」は、黄砂のことです。中七、下五の内容と上手く合っていますね。

病魔が退散しますようお祈り申し上げます。)

 

美乃里

いざ行かんマスク外しに新緑へ

(「外して」ではなくて、「外しに」というところが味噌ですね!)

夏きざす二十二曲がり古参道

(箕面の二十二曲がり、いってみたいところです。いい俳句ができそうな場所ですね。)

ひと休み草臥れ足を蟻が這う

 

518

森山凱風

干し物を慌て取り込む走り梅雨

カーネーション写真の母も喜びぬ

(喜びぬ喜びて がいいと思います。「ぬ」は、完了の助動詞ですので、もう終わったこと。「~て」は、写真のお母さまがにこにこなさって、今も喜んでらっしゃる様子が表現できるように思います。)

はつ夏にオレンジ輪切りウイスキー

 

橘 雅子

カーネーション白色一本母の忌に

おさげ髪初風炉稽古に袱紗打つ

金魚草泡ひと吹きのおちょぼ口

(金魚草を見ての写生句なのですが、金魚草を上手く可愛らしく捉えていらっしゃいます。)

 

橘 覚雄

長谷寺の咲きを競ふは大牡丹

武者人形八十路半ばも床飾る

(八十路半ば「の」でも、良かったのではないかと思いました。)

庭畑野菜色づく薄暑かな

(どんな野菜を育てていらっしゃるのでしょうか。楽しみですね。)

 

加藤碩信

湯上りの嬰児にほのと菖蒲の香

(菖蒲の香りをここでも感じすように思う句です。生まれたばかりの赤ちゃんに菖蒲湯をつかわせたのですね。邪気が払われて、あかちゃんもすくすくと育つことでしょう。)

棕櫚の花残して屋敷売られたる

(棕櫚の木は、その家を買った人に引き継いでもらったのでしょうか。)

利根川のゆったり流れ麦の秋

(利根川の雄大な流れ、そのまわり点在する麦畑。目に浮かぶようです。)

 

田倉明眼

照る若葉風と一つにそよぎおり

ツバメ飛ぶコロナ予約の人笑顔

(やはり、ワクチンを打ったら安心ですね。燕の飛ぶ様子も嬉しそうに感じます。) 

 

517

土井重吾

御開帳伽藍を渉る青葉風

(「開帳」が、春の季語ですので、季違いとなってしまいます。)

榾爆ぜて貴人現る薪能

(「榾」が冬の季語、「薪能」が春の季語です。これも、季違いとなります。)

影絵なる代田に夕陽沈みつつ

(美しい句です。)

 

柏谷絶学

夏の朝瀬田の唐橋覆ふ雲

(朝の琵琶湖の様子がよく表されていると思います。)

琵琶の湖青葉時雨は音も無く

(「大琵琶や青葉時雨は音もなく」、琵琶湖のどの辺で青葉時雨に会われたのでしょうか。しっとりたした綺麗な句です。)

夏の月待ちて琵琶湖は寝静まり

(どこかで、一晩中琵琶湖を観察されたのですね。夏の月も拝めましたか。)

 

井内温雄

入梅や施設の父よ息災と

(「入梅や施設の父は息災と」、お父様が、またお元気になられたのこと、よかったです。温雄さんのお父様を思う気持ちが伝わってきます。)

医療者を聖火逆撫で梅雨に入る

つちふるや聖火の幟消え去りし

 

三原寿典

[安土城博物館にて]

木偶(もくぐう)の男女むつまじ夏初月

(土偶は、縄文時代に多く作られ、その後、弥生時代には、木偶が作られました。木偶は常に男女一対だそうですね。)

寺守の軍手の緋色夏来る

(坊守さんの軍手の赤い色が、夏を呼んだのでしょうか。)

直会でカップの酒を奉扇会

 (直会(なおらい)と読むのだそうですね。義仲寺の奉扇会の後、俳句仲間でカップ酒で乾杯したそうですね。「カップ酒似合う女在り奉扇会」()

 

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 第63回インターネット句会(2021年4月23日〆切)

4月23日

三原寿典

初燕城崎駅に今着きぬ

(”今着きぬ”から初燕と一緒にご自分も城崎に着かれたそんな感じが伝わってきます。)

[日本最古の神社、多神社にて]

桜南風あまたの絵馬の揺れる音

(畝山が遠くに見える神社ですね。音と映像が伝わって来ます。)

春水の溢るる路や大比叡

 (春先の比叡山に登られたのですね。いいね!)

 

坂本法燈

幹に咲く逞し桜いのちかな

(気持ちはわかります。老木の幹に小さな花をつけることがありますね。「胴吹き桜」というそうです。老木や剪定された木によく咲くそうです。「老木の胴吹き桜けなげかな」)

花吹雪嵐舞うなり宵の城

つつじの香はるけき彼方入学式

 

智常

糸遊やまつり縫いする母のおり

(“糸遊”は陽炎のことで春の季語ですね。縫物の糸に引掛けて、お母さんを思い出す、いい句ですね。また、糸遊は、晩秋に蜘蛛が糸を吐きながら空中を飛ぶ現象だそうです。もともと中国では蜘蛛を指しているそうですが、日本では陽炎だそうですね。)

午後二時に電車は溶けて目借時

(ユーモアのある句です。眠い眠い感じがよくわかります。)

ゴールデンウィーク用に二冊買ふ

 

美乃里

映像の桜で済ます春の義理

(コロナ禍は、いつまで続くのでしょう?みんなで集まって、仁和寺での御室桜、見がしたいですね。川端康成の『古都』の言葉を巧みに使われています。)

子の土産ことさらうまし草の餅

(遠くから帰ってきたわが子のお土産!最高の味だったことでしょう。)

 永き日にいつもの家事を粛々と

 

柏谷絶学

空合や三椏の花残る庭

(庭の三椏の花を見ていたら空模様が気になりだした~という感じでしょうか。)

山清水溢るる田畑大原路

(山清水は夏の季語ですが、このとき、実際に田んぼに山からの水が溢れて、それが春水ではなく、ほとばしる清水であったことを物語っていますね。)

山寺の参道に添ふ著莪の花

 

 上田月庵

結界のごと落ち花に遮られ

(いいですね!こういう句、好きです。)

夜桜や妖しいまでの立ち姿

(夜桜に”妖しさ”を見る。美しいという言葉を使わずに、見事にそのことを最高に表現しています!)

コロナ禍はいよいよ凄まじ春憂う

 

4月20日

とかげ

巣籠や名もなき家事をまた一つ

(家事もたいへんですね。)

白髪染手放す五十路春惜しむ

春マスク外しえくぼの君戻る

(マスクは、最近季語ではなくなりましたね。かわいい句ですね!!)

 

4月19日

橘 雅子

竹の皮めくりて行けば白き肌

山椒の芽パンと一打ち香の満つる

(ここまで、山椒が香ってくる感じです。いい香り!!)

レタスの葉日毎に巻きはふくらかに

(楽しみですね。)

 

橘 覚雄

山寺の茶店婆やの桜餅

経机一輪生ける桃の花

(桃は特別な意味も持った花です。経机に一輪。)

本堂で園児と歌ふチューリップ

(童心に帰って行く境地、勉強させていただきます。)

 

4月18日

森山凱風

茶柱や句作はかゆき春の朝

(茶柱の佳事と句作が上手く行ったことを重ね、さらに春の朝の明るい雰囲気を醸し出しています。”はかいく”は捗る(はかどる)の意味、”はかゆく”は捗が行くの意味かと思いますが、、、)

義士祀る何を思うや内蔵助

春来たる空白のなき日記帳

(几帳面なご性格。すばらしい!新しい年度が始まりましたね。季語と中七。下五がよく合っています。)

 

加藤碩信

花の下純白の馬疾走す

(桜花賞の白毛馬ソダシのことですね。史上初の快挙ですね。白い桜が咲き誇りました。)

松山快挙列島の湧く四月かな

(松山よくやりました、素晴らしい!ゴルフは、女子も頑張っています!)

マンションに替はる屋敷や初燕

(立派な御屋敷がマンションになってしまうと、なんだか、ちょっと残念なような気持ちがします。世代の移り変わりを初燕でひょうげんされていると思いました。)

 

4月17日

井内温雄

横書きの俳句苦手や糸柳

(糸柳は縦書きのようなものでしょうか。でも柳のように縦にも横にもしなやかに生きましょう。)

謳ひ揚ぐ小倉百人日永かな

「芭蕉翁絵詞伝」展

はでやかや若冲花卉図春日和

(「芭蕉翁絵詞伝」展に私も行ってきました。素晴らしかったです。春日和がよく合っています。)

 

 62回インターネット句会(2021321日締め切り)

 

321

三原寿典

今も湧く西行井戸や馬酔木咲く

(奥嵯峨の落柿舎の近くに西行井戸がありますね。昔から湧き続けている西行井戸と今咲いた馬酔木の取り合わせがいいですね。)

恋神籤梅のつぼみは紅の色

(なんだか、意味ありげな句です。恋御籤と紅色のつぼみが良くあっていますね。)

つばくらめ国歩の不安語りおり

(国の行く末を憂う、なかなか立派な燕です。)

 

美乃里

啓蟄にもそもそもそと動き出づ

(とってもいい句なのですが、啓蟄の説明をしているような気もするかな。)

ふんばつた球児にエール風光る

(気持ちの良い句です。)

良し悪しき己に因るを知る彼岸

(中身の深い句です。)

 

佐藤泰仁

しばし待て校庭さくら新笑顔

桜坂登り消え行く我が子の背

(ドラマや映画の中のワンカットが思い浮かぶような句ですね。すばらしい!)

そぞろなりこぶし緑道歩く影

 

田倉明眼

姉妹ピースのサイン春の浜

一歩ずつ進み行けるや子も春も

(お孫さんも一日一日成長され、気候も暖かくなってきますね。)

新しき事始めよう春の朝

 

坂本法燈

皿上にぬめりと光るホタルイカ

(蛍烏賊をよく観察されてますね。法燈さんは、蛍烏賊が好物なのでしょうね。)

孫の手に持たせてやりたい小てまりの花

(小てまりを持たせやりたや孫の手に、とすれば五七五になりますね。)

学生を涅槃にいざなう春安居

(無~、、、、、)

 

坂本由美子

春来たりワクチン出でてコロナ去る

(そのようにお願いしたいですね。)

笑み浮かぶおでん大根とろけたり

(笑顔と美味しそうなおでんの大根が目に浮かぶようです。)

メイストーム大暴れして去り行きぬ

 

柏谷絶学

十年(ととせ)かな御霊安かれ東北忌

2011311日の東日本大震災のこと、今も、すべてのことがもとどおりになったわけではありません。東北忌は、季語になりましたね。)

啓蟄にゴミ出す我の寝癖かな

(髪の毛ことですね。這い出して来る虫たちに自分をなぞらえているのですね。)

星朧閉店間際のスーパーへ

(星朧は、春の星の傍題(副題)で、素敵なことばですね。季語の使い方も旨いです。)

 

 橘 雅子

山茱萸の小粒の花のまばたきて

(まばたきての擬人化が面白いですね。)

骨壺は小さく軽ろし涅槃雪

(悲しさ寂しさが、じんわりと伝わってきます。)

春の朝コーヒーの香は仏前より

 

橘 覚雄

〇青き踏み気合の一打ホールイン

(ゴルフをやる人にとって、ホールインワンは夢であります。)

大和川土筆の坊や摘み取りて

◎春雨や株分け苗木根を下ろす

(株分けした苗木がつく嬉しさ!!春雨の季語がよく合っています。「春雨や株分けし苗根をおろす」としてはいかがでしょうか?)

 

森山凱風

古寺の木戸僧開けたれば水温む

春の山行きかうハイカー友となる

(楽しい情景ですね。)

春めいて禍あれどこころ浮く

 

土井重吾

咲き初むる花やさしげに東山

(東山のどの辺でしょうか。とこかに出てくるような名調子ですね。)

川岸に柳絮も飛ぶや空蒼く

見て見てと勿忘草が足元に

 

世古智常

つちふるや3000キロの旅路かな

(黄砂の説明となっているものの、遥々やってくる黄砂に感嘆しているのでしょうか。)

人心は大義で動く4月付

(4月の人事異動、大儀なき異動は組織を滅ぼす!人事を弄ぶな!(笑))

無常とは季語でなくなるマスクかな

(まさにそうですね。)

 

上田月庵

コロナ禍や少し落ち着き2月尽

(残念ながら、第三波、第四波が来てしまいました。(6月上旬)

菜の花の天ぷらうどんほろ苦し

待ちかねた我が家の花も五六輪

 

318

加藤碩信

あの津波なかりしごとく桜貝

(絶学さんの3.11の句とは、また違う観点から、自然の偉大さを詠んでいらっしゃいます。)

春満月こちら地球は疫の中

(とらえどころが、面白い。)

大空へメタセコイアの芽吹きかな

(メタセコイは冬に、真っ赤になって葉を落とします。その木が春に青々と芽を吹く。素晴らしい光景が目に浮かびます。)

 

令和3317

井内温雄

【マルコ山古墳】

墳丘の眼下の飛鳥風光る

(マルコ山古墳行ったことはありませんが、そうなんでしょう!)

【奈良高取町雛巡り】

圧巻の天段雛や五百体

(見てみたいものです。)

高取の城下を練るや変わり雛

 

 61回インターネット句会 (令和3219日〆切)

 

61回インターネット句会 (令和3219日〆切)

219

とかげ

Eメール出そか辞めよかシクラメン

春の鹿我の後ろに何を見る

末っ子の初運転や春来る

(大学生になった娘さんの成長が嬉しいけれど、まだまだ、よく見守ってないと!という気持ちが読み取れます。身近なことを題材にしたいい句ですね。)

 

世古智常

片栗の語り出したる繰り言や

自粛する人生を問ひ海苔を食う

(自粛の生活は、もう長く続いていますね。酒を出さない居酒屋に行ってもしょうがないですしね。)

梅一輪独りっきりの凄まじき

(“凄まじき”は意味としては、「荒涼としている様」とあっていますが、言葉の印象としては現代ではきつくなってしまっていますね。句としては佳句だと思います。)

 

美乃里

けふは晴れ夫に倣ひて探梅行

(上五が、いいですね。明るくて、清々しい感じがします。)

ふんばれとそつと背に言う春近し

休業の二文字が東風に吹かれおり

(いい句なのですが、前半の内容と東風がちょっと合ってないような感じがします。「東風吹けど休業の文字いと侘し」)

 

坂本法燈

首すくめ春待つ日々の遠きかな

(「首すくめ春待つ日々の永きかな」とした方が意味がとおりますね。)

天翔ける只管打坐なる春の夢

蕗の薹苦味後引く香ばしさ

 

坂本由美子

蕗の薹てんぷら食べて出会いあり

(美味しいものを食べて、良い出会いがあったのですね。すばらしい!)

インフルも今年は出番なくなって

(不思議ですね。コロナ予防のために皆手洗い、うがいをきちんとしているからでしょうか。)

顔熱く日差し強まり春近し

 

上田月庵

寒時雨犬もコートを被せられて

(寒い感じがよく出ているのですが、寒時雨とコートが季重りになっていますね。)

コロナ禍や何ごともなく梅匂ふ

春浅し光に巡る観覧車

 

柏谷絶学

梅東風や今日は何処に吹くのやら

(風来坊の旅を思わせるような句ですね。)

立春や布団の中はポッカポカ

春の夢我は未だに高校生

(春の夢と青春を掛けているのでしょうか。精神的に少し不安定な高校生の時期と春の夢のぼやっとしたイメージがよく合ってます。)

 

橘 雅子

春の朝華厳の夢に二度寝して

(すばらしい夢の続きをご覧になれたのでしょうか。)

凍て星やチュール帽の友お浄土へ

〆切の句会待たずに梅散りて

(今年は咲くのも早かったですが、散るのも早かったですね。)

 

橘 覚雄

朝夕に甘き香りや庭の梅

春浅し古き机に祖父の面

箱根三里富士五合目に残る雪

(箱根においでになったのでしょうか?箱根八里という有名な歌がありますね。三里はどこらへんでしょうか?)

 

田倉明眼

馬鈴薯を一刀両断春近し

(いい句なのですが、馬鈴薯が秋の季語で季違いですね。)

ペダルこぐ鶯餅を二個持って

(楽しい句ですね。鶯餅、誰と食べるのでしょうか。)

道病の友訪ね来る二分の梅

(いい句と思いますが、道病とは?)

 

218

井内温雄

(吉備池畔に大来皇女歌碑を見つけて)

遠霞歌碑の先なる二上山

(大来皇女の歌碑とは、「神風の伊勢の国にもあらましをなにしか来けむ君もあらなく」の記された碑でしょうか。父(天武天皇)が亡くなり、弟の大津皇子の謀反で伊勢での斎王の任が解かれ、明日香へ戻らざるを得なくなった時の句です。このときは、もう父も母も弟も亡くなって、大来皇女は、たった独り。遠霞が、万葉の世界を想わせます。)

下萌や皇子の詠みたる辞世歌碑

自粛やめ春一番にペダル踏む

 

土井重悟

仮想旅気付けば一人余寒せり

櫂の音の船べり触る猫柳

(近江八幡か、倉敷か、伏見か、どこかしら〜 重悟さんは、船に揺られているのかな、川岸でみてるのかな。美しい情景が思い浮かびます。)

どんと焼原始の焔(ほむら)燃え熾る

(どんど焼き、どんど、とんど、とも言い、左義長のことで、新年の季語です。門松、注連縄などを正月の火祭で焼くことです。重悟さんは、どこの火祭に行かれたのでしょうか。)

 

森山凱風

立春の芽吹き未だしうそ淋し

(芽吹きも春の季語ですね。)

春寒く山の辺の道白きかな

暖摂るや数羽塊る寒雀

(暖も季語ですね。)

 

三原寿典

蕗の薹コロポックルの囁きが

(ファンタジーの世界に入ったような句ですね。コロポックルは、北海道の蕗の薹の葉っぱの下に隠れている神様です。)

身罷りし朋の笑顔や残る雪

(今、入院患者への面会はどの病院でも禁じられてるようですね。誰にも会えないままに亡くなってしまった友。笑顔だけが思い出されます。)

コロナ禍に小さき安堵や蕗の薹

(ほんま、そうですね。この自粛生活の中、蕗の薹見つけたら、なんだか安心した気持ちになりますね。小さきが効いてます。)

 

加藤碩信

老い二人昔を語るハイネの忌

(いい句ですが、ハイネの忌は、私の角川季寄せには載ってないのです。1856217日に死去とありますので、まさに当季ですね。)

晩節を汚す男に春の雷

(時事句ですね。我々が言うより碩信さんが言う方がうんと重みがあります。)

ドナウ川に誘(いざな)ふ春のコンサート 

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ー60ー回

第60回インターネット句会(令和3年1月19日〆切)

(講評は、寿典さんと絶学で作成しております。) 

 

1月19

上田月庵

門松を幾つ残すや旅の空

コロナ禍の緊急事態オリオン座

ありがたや友の気遣い寒日和

 (辛いときにこそ、友の気遣いも一層感じるものですね。寒日和の季語がよく合っています。)

 

坂本法燈

()の中を潜る女体の白きかな

闇の河肩寄せ浮かぶ夫婦鴨

香を求め蠟梅尋ぬ天満宮

 (綺麗な句です。「尋ぬ」は、終止形ですので、ここで切れがありますね。)

 

坂本由美子

寒い中ペダル漕ぎ行く母ホーム

(ペダル踏む母のホームへ着ぶくれて にしてみては如何でしょうか。)

 ミカンありテーブルの上華やいで

カキフライ牡蠣飯かきおこ食べ尽くす

(食べ尽くす牡蠣飯かきおこカキフライ としては、どうでしょう。

 上五だけで、何を食べたのか連想させますね。)

 

世古智常

金星も羨んでみる柚子湯かな

友どちの寒中見舞い夫逝く

雪は降るあのジャズ喫茶今はなく

(昔親しんでいた場所がなくなるのは、寂しいですね。その感じがこちらにも伝わってきます。)

 

田倉明眼

孫走る足音聞こゆ初湯舟

(お孫さんと一緒の初湯舟、明眼さんのわくわく感が伝わってきます!)

灸の火に手かざす今朝の寒さかな

小正月風呂に残れるアヒル五羽

(三が日もとっくに過ぎて、お孫さんが帰ってしまった後、アヒルだけが残り、そのアヒルを眺めている明眼さんが目に浮かびます。)

 

柏谷絶学

大寒や今日の晩飯気にかかり

なつかしき石狩鍋の記憶かな

植え替えし蝋梅の花愛おしく

(植え替え成功!おめでとうございます。)

 

118

森山凱風

手書き文字見つけて嬉し賀状かな

(そうですね、わかります。)

遠方の孫に年玉暮れの内 

(年玉は、新年の季語。暮れは、冬の季語。季違いとなってしまいますね。)

漱石の虞美人草で年が明け

(暮れから年明けに『虞美人草』を読んでいらっしゃったのでしょうか。なんと高尚!)

 

橘 雅子

御敷紙ブリブリ香合艶やかにか

御供のお鏡開き小豆汁

(今は、真空パックのお餅が多いですが、この句からは、昔ながらの固くなった鏡餅を小さく切って小豆汁を作ってらっしゃる様子が伺えます。ただ小豆粥(汁)、お供えが新年の季語で、季重りですね。)

鳴呼鳴呼蝉丸めぐる歌かるた

 

 橘 覚雄

箸すすむ炊きたて飯に寒卵

(気持ちの良い句です。「寒卵」を下五に持ってこられたことも、この句の成功の鍵であったと思います。)

初風呂で吟ずる夫の朗々さ

青竹と古木束ねて松飾り

 

とかげ

七色の襷風切る三日かな

(箱根駅伝!みんな頑張れ―!)

空想の旅もまた良し日脚伸ぶ

(ファンタジーを感じる句で、とても良いと思いました。)

母は味噌義母は醤油で大根煮る

(面白いです、目の付け所がいいですね。詩的ではなくて普通の文章のようになってしまったところが、惜しいと思いました。

 大根煮る義母は醤油で母は味噌 上五下五を入れ替えてもいいですね。)

 

美乃里

真暗闇朝の含嗽寒の水

(行をしている人に朝のような感じがしました。三段切れになっていますが、そのことが朝の寒さ、その厳しさを物語るのに効果を出しています。)

寒土用一つ年とり空仰ぐ

(寒土用…立春の前の18日間のことです。寒さの厳しい時期ですね。美乃里さんは、このときにお生まれになったのでしょうか。)

ひとしづか靴音しみる眠る山

 

三原寿典

神苑に龍守りたる恵方道

(神泉苑ですね。私も好きな場所です。)

凍て月に達磨大師の鋭き眼

(寿典さんの家のすぐ横に達磨寺があるそうですね。達磨寺で吟行会やりましょうか。)

結ひ上げる長き黒髪着衣始

 

土井重吾

左義長に集う着ぶくれ福童

(上手くまとまった良い句です。左義長は、小正月の火祭のこと。)

初日とやただ日常のあれよかし

雪催来ぬ人待ちてカフェテラス 

(恋の句でしょうか。雪催(ゆきもよい)、今にも雪が降りそうなどんよりした空のことです。

誰を待ったはったんやろ〜)

 

加藤碩信

ふる里を恋ふて餡餅雑煮かな

(故郷を懐かしんで、餡餅雑煮を食べてらっしゃる姿が見えるようです。香川出身ですか?)

老いたれば小ぶりがよろし雑煮餅

(そうですね。喉つめないように気を付けてお餅は小さめに。)

初夢や引けど動かぬこって牛

 

井内温雄

ラグビーの天理の勝つや湯上がりて

電車待つ前のリュックの破魔矢かな

(破魔矢がリュックからはみ出している、そんな光景がそこここにある新年の風景ですね。リュックにのほうがいいかもしれません。)

国旗揚ぐ成人式の二軒かな

 

第59回インターネット句会(12月19日〆切)

1219

世古智常

おでんこそ一人しみじみ食べるよし

(単身赴任されている智常さんの様子を垣間見たような句です。)

風花やじっとして待つじっとして

粕汁や妻は運転心配す

 

三原寿典

雪ばんば天満宮から釈迦堂へ

(雪ばんばに案内されて、北野の天神さんから千本の釈迦堂に参られたのでしょうか。京都らしい雰囲気が醸し出された句ですね。)

太閤の御土居の跡や冬紅葉

(京都をぐるりと囲んだ太閤の御土居。炭﨑先生に吟行で連れて行って頂いた壬生寺の墓地の奥にもありましたね。(懐かしい!)寿典さんが詠んでいるのは、北野天満宮のの御土居ですね。)

時の疫(え)に竈出番なく大根(だいこ)焚き

(今年の冬の大根焚きは、コロナの影響で中止となり、残念でしたね。)

 

柏谷絶学

子ら巣立ち家終ふ日や雪深し

(今回は、三句とも「家しまふ」の句でした。よく決心されましたね。「雪深し」の季語がぴったりです。)

家終ふ柱のキズに古暦

(もう、家を手放すそうというときに目についた柱のキズ。胸にこみ上げてくるものがありますね。キズとカタカナにされたところがいいですね。)

家仕舞ふ笑へや笑へ年の暮

(この句だけが、「仕舞ふ」という漢字になっていました。家を処分されて、ここから又新しい出発に何か良い予感が〜がんばってくださいませ。Good luck!!

 

坂本法燈

艶やかに今年も咲けり寒椿

(花の少ない冬の寒い時期に寒椿が咲いた喜びが伝わってきます。)

疫病に耐えて澄み行く冬安居

(コロナ禍の中、よくがんばられたと思います。)

咳き込みて冥土の土産見つけたり

 

坂本由美子

平熱と今日も喜ぶコロナ風邪

パシャパシャと川面に遊ぶ初鴨よ

(初鴨は秋の季語でした。この句も「初鴨のパシャパシャ遊ぶ川面かな」となると落ち着きますね。)

小春日をからだうけとめ笑みこぼれ

(小春、小春日初冬の季語で、まだ寒くなりきらない頃の暖かい日和が春に似ているので、このように言います。幸せを感じる句です。

この句も「小春日を躰に受けて笑みこぼる」とすると字余りが無くなります。)

 

1218

橘 雅子

遠州の古井戸塞ぐ寒さかな

(背景がよく分からないのですが、「古井戸を塞ぐ」というその家の重大行事に関わりがあるのでしょうか?)

数え日や小さき包みの実の香

なまはげに脅えてみたし母の里

(秋田の牡鹿の半島の年中行事ですね。お母様の故郷に訪れてみたい気持ちを上手く表現されています。)

 

橘 覚雄

晨朝の読経の息の寒きかな

コロナ禍の南無阿弥陀仏年の暮

(このコロナ禍の中の暮れ、南無阿弥陀仏と唱えるしかありません。)

補陀落へ訪ね人なき冬の海

 

田倉明眼

粕汁や昼から孫の来るという

(お孫さんが来るの今か今かと待っているおじいさんでしょうか。)

寒風に身さらしバイク潔し

(寒い中のバイクの運転ご苦労様と一声かけたくなりましたでしょうか?)

夕時雨今孫遊びおりし庭

(「今孫遊びおりし」は、意味が難しいと思います。1.ついさっきまで楽しく遊んでいた。2.今遊んでいるところに。どちらでしょうか。「孫遊ぶ庭に突然夕時雨」、「今し方孫おる庭に夕時雨」)

 

とかげ

音の鳴るカードを母へクリスマス

徹宵し無重力なる冬の堂

(徹夜で座禅すると、意識も朦朧となり、まさに無重力の世界ですね。「徹宵や無重力なる冬の堂」でもいいかもしれません。)

自粛とは請われるものか銀杏枯る

(おっしゃるとおりです。政治家さんは、日本語わかってないのかな〜不安になりますね。自粛・・・自分の行いをつつしむこと(広辞苑))

 

上田月庵

あれこれとあって傘寿の師走かな

(傘寿を迎えられたこと、おめでとうございます。)

初霜や朝陽の中に光る息

(霜がおりるほどの寒い朝、自分の息がキラキラ黄金に輝く様子がありありと目に浮かびます。)

いまここに手足伸ばして日向ぼこ

(いまここに、将に生きている自分。ゆっくりと、のんびりと日向ぼこしてらっしゃる月庵さんの姿が目に浮かびます。いい句ですね。)

 

世古みのり

散り紅葉足を入れよかやめとこか

(紅葉があまりにも綺麗で、足を踏み入れるのをためらう作者の気持ちが伝わってきます。)

冬の日の整列の先地域券

(地域券とは、goto eatなどの商品券でしょうか。寒い日に並ぶのは大変です。)

雪はげし街の日常奪いけり

(どちらに行かれたのでしょうか。北陸方面は、大雪で大変でしたね。)

 

加藤碩信

はやぶさの還る師走や朗人逝く

(物理学者であり、政治家でもあったし、そして、すばらしい俳人であった有馬朗人氏が、亡くなられたことは、私もショックでした。碩信さんは、有馬先生に俳句で賞を頂かれたのでしたね。)

熱燗を悠然と酌む車椅子

(車椅子の方が、ゆうぜんとお酒を楽しんでいらっしゃる様子が目に浮かびます。)

風呂吹を吹き吹き食ふや店時短

(はやく食べないと店が閉まってしまいます。)

 

12月17日

土井重吾

炉開に締め出し食らう猫の貌

首の老消すマフラーのチェック柄

(お洒落な重悟さん!)

白磁とや終大師の陽を浴びて

(終大師、終弘法のこと。去年、暮れ1221日東寺の終弘法は、沢山の人出のようでした。

重悟さんも、いらっしゃったのですね。「終大師の陽」という表現が良いですね。)

 

井内温雄

(圓福僧堂にて)

寒風のすさぶ禅堂数息坐

(接心、お疲れ様でした。)

喚鐘に跳ねし独参空っ風

(「跳ねし」という表現で、独参の緊張感が伝わってくるように思いました。脚も良くなったとお見受けします。良かったですね。)

接心の下山合掌寒椿

 

森山凱風

灯の早点りけり冬の夕

冬の朝インクの匂い頁繰る

(朝は五感が研ぎ澄まされています。インクの匂いもいつもより強く感じますね。)

喪の知らせ木枯らしに舞い葉が踊る

(「木枯らし」「舞う」「葉が踊る」これらの言葉は意味が重複しています。また、「喪の知らせ」と「葉が踊る」の意味が相反するものです。「喪の知らせ凩に葉の舞い落ちる」としたら如何でしょう。) 

 

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第58回インターネット句会(2020年11月19日〆切)

58回インターネット句会(1119日〆切)

1119

上田月庵

秋冷やオンラインなる瞑想会

鬼の子もコロナの風に吹かれおり

(鬼の子とは、蓑虫のことで、三秋の季語です。本当に鬼の子供もコロナを怖がっているようで、ユーモアーのある句です。)

透析の針刺す指の冷たかり

(冷たい指で針を刺されると、余計に痛くて辛く感じます。その心境を見事に詠んでいらしゃいます。)

 

三原寿典

黄金に雲井染めあぐ後の月

(後の月は、陰暦九月十三日の月のことで、十五夜より一ヶ月後の月を愛でることです。十三夜とも言って、もうすぐ満月になるところの月を愛でます。寿典さんは、十五夜も十三夜も愛でられたのでしょうね。)

千歳飴早よ食べたいとせがむ稚児

(まだ、三歳や五歳の子供にとって、七五三はお参りよりも千歳飴!なのでしょう。)

冬落暉瀬戸に散りばむ小さき島

(倉敷から高松の方に旅行されたそうです。瀬戸内海に沈む夕日が目に浮かぶようです。また、冬落暉という言葉がいいですね。)

 

坂本法燈

疫病も松茸かほる土瓶蒸し

大輪の冬菊開き大気裂く

 (菊の凛とした感じがよく表されています。大の字が重なっているのも、この句では効果を出しています。)

悟りとは清浄心と見たる秋

 (さすが、支部長!!)

 

坂本由美子

マスク取りうどんすすりてうましかな

 (外出先で熱いおうどんを〜美味しいですね。)

咳するも一寸手を当て目を伏せる

 (その通りですね。コロナなんじゃない?って、思われてるかもとか気にしつつ〜 なんだか、変な世の中ですね。)

体調に一喜一憂コロナ風邪

 (コロナ?風邪?法燈支部長の風邪にご心配されたことと思います。早く元気になられてよかったです。) 

 

世古みのり

色味なき庭に薄もも山茶花よ 

(山茶花の淡いピンクが、庭を明るくしていますね。)

秋深し川悠々と天王山

(スケールの大きな句です。天王山と男山の間で、桂川、宇治川、木津川が合流して淀川になります。“川悠々と天王山”は工夫が出来るかもしれません。)

落栗の毬のみ転ぶ道しるべ

 (山歩きをしていると、色々なものに出くわして、素敵な句ができますね。)

 

智常

とぼとぼと琴平の里柿紅葉

 (琴平は出張か何かでいらっしゃたのでしょうか。「とぼとぼ」に疲れた感じがにじんで、心情が籠ってますね。擬態語の使い方、上手いです。次の日は、しゃきっとしていそう!)

うとうとと鈍行となり秋四国

 (この句も、擬態語を使われています。鈍行で居眠りをしていらっしゃるのか、それとも、うとうとしてて鈍行になっちゃったのか〜四国瀬戸内ののんびりした感じが、よく出ています。“秋四国”→“四国秋”でもいいかもしれません。)

釜揚げの湯気わらわらと瀬戸の雲

 (三句目も、上手く擬態語を使われています。香川のうどんは有名です。瀬戸内は、雨が少なく晴れた日が多いですね。「わらわら」が、釜揚げと雲の両方にかかっているという、すばらしいテクニック!! いい句ですね。楽しい感じがします。)

 

前田空果

冬暮れの天中渡る宇宙駅

 (「宇宙駅」ということが、もう一つ意味がわからないので、読み手にもわかるように句作すれば、もっと良い句ができるように思います。)

月冴ゆる身ぬちの鬼をまず遣らへ

(鬼滅の刃に引っかけているのかもしれませんが、良く分からない人が多いかもしれません。)

小春日や鬼滅刃もひと休み

 

柏谷絶学

逝きし師の面影に触れ秋思かな

 (炭﨑先生のお優しい眼差しや言葉、思い出されますね。)

残る蚊に刺され命日思出し

 (この句も炭﨑先生のことを詠んでいらっしゃいますね。)

柊の棘の痛さに身を正し

 (さすが、自分に厳しい絶学居士やわぁ!!(笑))

 

1118

とかげ

早朝の散歩は亡き師と冬帽子

(吟行会のとき詠まれたとかげさんの「冬帽子」の句、よかったですね!! 炭﨑先生も褒めてらっしゃいましたね。懐かしい!!)

散歩道イヤホン外す木の葉雨

初冬や膝小僧出す白不動

 (神童寺の「波切白不動尊」のことを詠まれました。御不動様を身近な感じで捉えてらっしゃるところがいいですね。)

(京都南山城の神童寺)

 

佐藤泰仁

朝の窓差し込む冷気柿の赤

 (触覚、次に視覚と、上手いテクニックです。)

酸っぱさを甘さ追いかけ初みかん

 (おっしゃる通りです。どんぴしゃりの表現!旨いです。)

紀州の香火照る頰あて初蜜柑

 (様子が目に浮かびます。ひらがなと漢字を使い分けるところが素晴らしい。)

 

土井重吾

たわわなる秋明菊の飛騨路かな

(飛騨にいらっしゃたのですね。秋明菊、美しかったことでしょう。)

通夜の宵おでんよろしく炊けてをり

(小説か映画の世界に入り込んだような感じがする句ですね。)

「夜の街」オレも主と狸言ふ

(おでん屋の前に信楽の狸が居たんでしょうか?)

 

 加藤碩信

冬に入る子規の墓前は供華貧し

 (子規のお墓参りをされたのでしょうか。子規のお墓は、松山ではなくて東京にあるそうですね。)

無頼派を気取る男の懐手

(ちょっと古いドラマを見ているような句で、なかなかいいですね。)

何もかも掃き出したくて熊手買ふ

(心情を上手く表現されています。)

 

田倉明眼

懐かしさいつ見たのやら秋日和

蛇の目傘回し歩けり七五三

(お孫さんのことを詠まれた愛情あふれる句です。「歩きけり」となります。)

墓参り先祖も吾も秋日和

(いい句なのですが、「墓参り」も「秋日和」も秋の季語ですので、季重なりとなってしまいます。)

 

橘 雅子

江戸絵師の奇才なるかな穴惑

 (「穴惑ひ(あなまどい)」は、秋の季語で、蛇が彼岸を過ぎて寒くなって来ても冬眠するための穴に入らないことです。奇才な江戸絵師と上手く付いています。)

「鬼滅の刃」館を出れば冬の雨

白椿一輪ごとの弥陀の笑み

 (とても、美しい句です。)

 

橘 覚雄

八十路過ぎ御絵傳説く親鸞忌

お点前の熾る炭火の生を聴く

(生を聴くというところがいいですね。前の句もそうですが修行の足りない我々には、なかなか評することが出来ない句です。)

芭蕉忌や小経称ふ僧一団

 

1117

森山凱風

新海苔は巻きずしがよし香りよし

 (海苔は、春の季語。新海苔、初海苔、寒海苔は、冬の季語。リズムが良く、海苔の香りがここまで香ってきそうな感じがします。)

コロナ禍に心浮きたち冬に入る

窓外の枯れ木に集う雀五羽

 

井内温雄 

時雨月接心始む総茶礼

(接心、お疲れ様でした。「始む」は終止形なので、この後で切れができて、三段切れになってしまっているのが、惜しいです。)

銭湯の真向法や散紅葉

(銭湯で真向法は効果的かもしれません。季語がちょっと離れているかもしれません。)

あと五分聞く無言館小春かな

 

10月19日

坂本法燈

バラの香に有象無象の世を忘る

  (いい句だと思いますが、残念なことに「薔薇」が、初夏の季語でした。

  秋の薔薇、または、秋薔薇(あきそうび)とすれば、使えます。)

桔梗咲く川辺に季節移ろひぬ

 (桔梗が一輪咲くことで、秋を感じられました。)

福福と笑ふ孫娘(マゴ)にぞ天高し

  (お孫さんとの幸せが満ち溢れた句ですね。お孫さんを抱き上げて、福福と笑ってらっしゃる法燈さんも目に浮かびます。)

 

坂本由美子

冬物をあわてて探すどこかしら

 (「探す」と「どこかしら」が重なっていますね。

 「冬物をあわてて探す旅支度」

 「冬物をあわてて探す夕暮に」などのように下五に違う内容を持ってきましょう。)

ホームレス寒さに負けず生き抜いて

(ホームレスの方に語りかけているのでしょうか。

優しい心がこちらにも伝わります。)

 みかんさんまた出会えたよろしくね

 

森山凱風

薄紅葉山色気立ち登山客

赤い羽根皆より偉く見ゆる哉

  (わかりますが、「見ゆる哉」は「見えるかな」と口語の疑問にされたらやわらかくなっていいかもしれません。)

山の辺の秋郊人を歩ませる

  (俳句の中で、擬人化を用いるのは難しいとされていますが、

山の辺の秋郊の擬人化が成功しています。)

 

佐藤泰仁

登る坂秋夕焼けに鴉二羽

(「夕日さして、山の端いと近うなりたるに烏(からす)のねぐらへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり」枕草子を思い起させる美しい句です。枕草子の中でも、これは、秋を愛でるところですね。秋夕焼けとされたところ、すばらしいです。)

天窓の陽射しほの薄秋の朝

  (天窓に差す薄明かり秋の朝、としては如何でしょう?、泰仁さんのおうちは、天窓があるのかしら?お洒落!)

 

世古みのり

この先に古寺ありと秋の鐘

  (素敵な句です!!この先に古寺があると教えてくれたのは、秋の鐘だったのですね。下5に秋の寺を持ってこられたところが佳いと思います。)

昔語り老ひ給ふ母菊日和

疫病禍去年より咲くや杜鵑草

  (私の親しい方のおうちの庭も、ほったらかしにしてるのに杜鵑草が、沢山咲いたそうです。)

 

智常

あらばしり酌む約束や九年来る

 (九年目に約束が果たされますように。)

秋晴れや六甲山を窓に置き

 (借景が六甲山という贅沢なお部屋。羨ましいです。

「窓に置き」という表現がいいですね。)

杜鵑草咲きましたよと妻の声

 (みのりさんの声が聞こえてきました!優しさの溢れる句ですね。)

 

加藤碩信

つつましく生きる余生や吾亦紅

 (上五中七と吾亦紅の季語が上手く付いてると思います。流石です。

  つつましくも、ますますのご活躍を。)

少し呆け少し悟りて秋深む

 (おめでとうございます。庵号を受けられ、ますますこのような境地になられたのかもしれません。)

秋晴れや胸を張らねば影老いる

 (おっしゃるとおりです。インナーマッスルを鍛えましょう!)

 

前田空果

星月夜億光年といふ刹那

宵闇や素数孤高にして孤独

 (素数は、約数がないから孤独なのでしょうか?面白い考え方ですね。)

車谷長吉読めばうそ寒き

 (車谷長吉さんは、高橋順子さんとの連句も有名ですね。)

 (三句とも連句の平句のようですね。心、感情などそれとなく入れていただけるとよくなると思います。)

 

土井重悟

これやこの追分宿のとろろ汁

(知るも知らぬも信濃名物)

黄金の稲田の涯に鷺の舞ふ

 (私は、最近目が悪くなり、そんなに遠くの鳥は認識出来ません。)

駅前の唄ふ男子に月微笑ふ 

 (最近、路上で歌っている男子女子多いですね。TikTokでよくみます。)

 

三原寿典

白川をそぞろ歩きや酔芙蓉

 (白川の辺りは、絵になる風景が多いです。そぞろ歩きと酔芙蓉がよく合っています。)

川原ゆく人皆美しき良夜かな

 (十五夜の夜の鴨の河原です。「清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき」与謝野晶子の歌にも詠まれていますね。)

穭田を突っ切る車窓比良の山

 (比良山が見えるのなら湖東のドライブでしょうか。その両脇にある穭田の綺麗な緑が目に浮かびます。)

 

柏谷絶学

老母(はは)ひとりホームに残し吾亦紅 

 (「吾亦紅」の季語が上手く使われています。吾亦紅が細い枝で立ち、風に揺られている姿は、寂し気で哀愁を感じます。ちなみに花言葉は、変化、移り行く、物思い、うつろい、憧れだそうです。

 お母さま、お大事にしてあげてくださいませ。)

壁際に寝返りを打ち身に入むや

 (「身に入る」という秋の季語は、天象です。)

新米は袋に仕舞いそばに置き

  (動詞を二つ使っていることで、かえってリズムができて詩的になっています。新米は、美味くて、なんだか幸せな味ですね。)

 

上田月庵

金風や生死をしれば恐ろしき

 (元気な頃は死ぬことなど怖くないと言うかもしれませんね。)

敗れ荷や元に戻らぬこの病

 (敗れ荷、秋の蓮、日々色あせて風雨に打たれて葉も破れて行きます。

敗れ荷(やぶれはす)には、敗荷(やれはす、はいか)、破蓮(やれはちす)などの子季語があります。季語の使い方がお見事だと思います。)

とにかくもインフルワクチンぬくめ酒

  (と言いながら、ぬくめ酒を呑む今日このごろ。)

 

10月17日

橘 雅子

茶の花へ香を嗜む僧会釈せし

(「茶の花へ香を嗜(たしな)む僧会釈」、この句の意味いろいろ悩みましたが、「僧が茶の花へ会釈をした」という意味なら、「せし」を取れば五七五に収まりますね。)

うろこ雲冉冉とゆく西の方

 (うろこ雲が綺麗な季節です。ぜんぜんという表現から、雲の流れてゆく様子がよくわかります。)

京言葉はんなり緋色紅葉狩り

(炭﨑先生に選を頂いた句です。銀閣寺の吟行に御一緒して頂いた

 時を思い出し御指導を感謝して  合掌)

 (素晴らしい句ですね。炭﨑先生の一周忌の冊子に載せたいと思います。)

 

橘 覚雄

帰り道出会ふ人なき夜寒かな

 (人も通らない淋しい道は、余計に寒く感じますね。)

金閣寺僧の背中に散り紅葉

 (美しい句です。紅葉が、僧の袈裟に散り落ちて行く様子が、ありありと浮かびます。)

葡萄棚手よりも先に口がいく

 (楽しい句ですね。葡萄狩りにいらしゃたのですね。)

 

井内温雄

坪枯の浮塵子(うんか)憎しと句友かな

 (今年はウンカが大量発生しているそうですね。農家の皆さんも大変です。)

爽快や坐後のはたらき落葉掻

 (そうですね作務は、修行の重要な一つです。)

桜井市にて

神奈備や月煌々の土舞台

 (いいですね、行ってみたいです。)

 

とかげ

蕎麦咲いて娘十九になりにけり

  (白い可憐なそばの花。娘さんは、十九さんになり、素敵に成長されたことでしょう。「蕎麦の花」が季語ですが、「蕎麦咲いて」とされたところが、良かったと思います。)

おめでとう赤いポストに秋あかね

秋天や吾子住む街に光あれ

  (秋のお天気の良い日に息子さんを訪ねられたのでしょうか。

  なんだか、晴れ晴れとした気持ちの良い句ですね。)

 

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第56回インターネット句会(2020年9月23日〆切)

9月23日

坂本法燈

寝返りす孫を見つめる柿一つ

(お孫さんが可愛くてしょうがないと、ほほえんでいらっしゃる法燈さんが目に浮かびます。)

 安居去り庭に飛び交う赤とんぼ

(安吾は、夏の季語でした。雨安吾、夏安吾、夏行などと同じ扱いとなります。赤とんぼが、秋の季語なので、季違いとなってしまいますね。)

 須磨浦に鯵釣り思ふ古ぞ

 

坂本由美子

夕焼けに見入る孫の目そっと見る

(お孫さんを可愛がっていらっしゃることがよくわかる句です。)

ゆらゆらとのうぜんかずらたゆとうて

(すべて平仮名にされたところにこの句の趣が出ました。
 せっかくですので、旧かなに致しましょう。
「ゆらゆらとのうぜんかつらたゆたふて」)

 お月さま指さす孫を抱き上げる

  

柏谷絶学

おしろいの花生けて待つ禅堂場

(道場の庭におしろいばなが綺麗に咲いていました。

 白粉花、夕化粧とも書き、夕方から夜にだけ咲く花です。土曜の夕方からの静座会のときに、また来年も~)

無花果や鳥と競いて味わいぬ

(無花果は熟してきたら、鳥に食べられてしまいます。鳥に取られてしまったと怒らずに、のんびりとこのような句を詠むのは最高!)

サツマイモ蒸(ふか)せど焼けど煮れど良し

(サツマイモの美味しい季節ですね)

 

とかげ

爽やかや作務終え若き友坐る

(ズバリ、Mさんのことを俳句にされました。

 この度の摂心で、とかげさんとMさんが入会されて、おめでとうございます。

「爽やかや」という季語が効いていますね!)

 身に入むや国勢調査母ひとり

午後五時の半額シール初秋刀魚

(生活に密着した俳句。下五に初秋刀魚がきたことで成功しています。)

 

三原寿典

(土曜静座会と後の作務に参加して)

伽羅の香や拝み太郎も禅堂に

(拝み太郎が線香の香りに誘われたのでしょうか。禅堂を履いていたら、たまにバッタやカマキリがいますね。)

職人の掛け声勇む白露かな

(誰のことでしょう? トイレを直していた人がいましたね。)

居士の炊く玄米粥や秋初め

(土曜正坐会の後の玄米粥接待、美味しかったですね。老師にお出しする玄米粥を我々もご相伴出来て嬉しかったです。卵焼きも美味しかったです。)

 

上田月庵

あれこれと捨てた後にも虫の声

(深い句ですね。私はこの句大好きです。恐れ入りました!)

四つ相撲胸のすくよな技になり

(「胸のすく技となりけり四つ相撲」としては、いかがでしょう。)

 

田倉明眼

早稲の香のそっと入りくる夜明けかな

(とても美しい句ですね。香りと光のバランスが絶妙。) 

 潮の香やコロナの夏の終わりゆく

鉦太鼓鳴らず一群曼殊沙華

(曼珠沙華の咲いている静かな風景が浮かびます。)

 

世古みのり

初秋や風の軽さに気がつきぬ

(秋がやってきた!という感じがよく出ています。)

声爽かよき出来事のあつたらし

(身近なことを十七音の中に上手く表現されています。
 声の主、どんないいことがあったのでしょう?)

 缶を開け初物さんま食む夕げ

 

佐藤泰仁

師を偲び俳句ひねる日天高し

(炭﨑先生の命日、来月です。それぞれに想いが胸にこみ上げますね。 天高しと結ばれたところが、すばらしいです。)

 朝見上ぐ陽は強くして肌寒し

 初冠雪樹海座布団富士の山

(樹海座布団、面白い表現ですね。富士の様子がよくわかります。)

 

智常

ウーバーの飛脚や白秋より来たる

(最近の世相を反映した句に白秋という綺麗な季語を入れたアンバランスがいいですね。)

しみじみと帰省子を待つ歳になり

(さらっと詠まれていて、こちらに伝わってくるものが深いです。佳句だと思います。)

子に送るダンボールかな思草

(思草、南蛮煙管のことですね。下を向いてちょっと悲し気に咲いてるように見えます。なかなかお子様と会えない気持ちを上手く季語で表現されてると思います。)

 

森山凱風

秋の夜や友のメールに安んずる

(どんなメールがきたのでしょうか。安心されて、心安らかになられてよかったです。)

枝豆の皮散らかして昼寝かな

(面白い句ですね。一茶のような〜)

 毎年の駄作の罪を子規忌寄せ      

9月20日

加藤碩信

秋の蚊の刺すに任せる坐禅かな

(刺すに任せる という表現から、真剣に坐禅に取りくんでいらっしゃる心を感じます。)

作務止めの板木響くや秋高し

傾ぐ身に警策の飛ぶ夜半の秋

(摂心での一コマがありありと目に浮かびます。八十路を過ぎて猶衰えない情熱を感じます。)

 

橘 雅子

浪速津の石碑巡りや西鶴忌

 (西鶴忌は、初秋の季語。『好色一代男』や『世間胸算用』で有名な井原西鶴(16421693)は、もとは、大阪の町人でした。石碑巡り、よかったことと思います。)

鬼の子は宙ぶらぶらり好みおり

(鬼の子は、蓑虫のこと。何気ない句ですが、「ぶらぶらり」の擬態語が効いています。)

床に掛く連歌の古筆虫の声

(掛け軸の連歌の古筆 と 虫の声 の付き方が、良いと思いました。)

 

橘 覚雄

長き夜に無量壽経を解く法座

(秋の夜長にお経の話、ピッタリです。)

湿る夜の床下に聞く虫の声

(床下に虫の声を聞きながら過ごす夜、なかなか趣があります。)

けなげなる岩の裂け目に草の花

(草の花の強さを語るいい句だと思います。)

 

土井重悟

 たおやかな指の先なる風の盆

朽ちて猶彩散らす百日紅

(綺麗な句です。百日紅の花が地面やベンチに散っているのも又とても美しいものです。「彩散らす」という表現がいいですね。)

ほのぼのと蝋燭囲む野分かな

(2年前の台風では、停電が一晩中続き、久しぶりの蝋燭を囲む夕餉でした。重悟さんも、このときのことを俳句にされたのでしょうか。)

 

9月17日

井内温雄

借り住ひ気楽にいこよ思ひ草

(思い草は、実はススキ、ミョウガなどに寄生する植物です。季語を上手く、楽しく使ってらっしゃいます。南蛮煙管の花の下を向いたような姿が、我を張らず、無理をせず、気楽に〜そんな感じに見えますね。)

道案内指さす方や稲光

(現代的な写生句ですね。臨場感が伝わります。)

喉通る酒に勢ひ衣被

(衣被は、スルッと剥けます。お酒もスルッとどんどん喉を通っていくようですが・・・控えめにお願いします。)

 

 

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